白雪姫「女同士入れ替わりと、女同士の憑依が好きです。


by irekawari
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狙われた少女その7

狙われた少女その7




四葉「なるほど、言いたいことは大体分かった。我にその身体を返すのはいやだ、我には四葉のこの身体のまま一生を過ごせと、そう言いたいわけだな、四葉?」
四葉は腕を胸の前で組み、両足を揃えるようにして、理央を見上げるようにして、悠然と立っている。
その姿からは、理央の「身体を返さない」という脅しに屈するような弱々しい態度は微塵も感じられない。

椿(さすがは魔王長さま)
椿はこんな非常事態にもかかわらず理央が堂々とした態度を崩していないことに感動していた。
もし自分が誰かと身体を交換して、元の自分の身体を返してくれないことになったら、やはり取り乱してしまうだろう。

理央「さぁすが元・魔王長さまは椿なんかと違って物分かりがよくて助かりますわぁ」
理央はわざわざ「元」の部分を強調して言った。その口調は相当嫌味ったらしい。
椿「あぁ!あんた!また私を呼び捨てにしたわね!!」
理央「ふふふふ、物分かりの良い魔王長さまに、ぜひ言ってもらいたいことがあるんですの?」
理央は椿を完全に無視して、階下の四葉を見下ろしながら言葉を続けた。
四葉「なんだ、言ってもらいたいこととは」
理央「私は魔王長の理央。そしてあなたはただの一般戦闘員の四葉。それはもう分かっていただけていますよねぇ?例えば魔界の住民が今の私たちを見て、果たしてどちらを自分たちの王・魔王長だと判断するかしら?」
四葉「それは当然、今のお前だな、四葉」
椿「ま、魔王長さま!?」
椿は驚いた。言葉の上だけだが、魔王長が四葉を認めるような発言をしたからだ。
理央「あら、分かっているじゃありませんか。だったら、今後私のことはちゃんと『魔王長・理央さま』と呼ぶように。そしてあなた・・・いえ「お前」の名前は今日から『四葉』よ。さあ、言ってもらいましょうか、」

理央「『私は地位も実力もないヒラの戦闘員の四葉です、魔界一美しく、魔界一の魔力を持つ、王の中の王・魔王長の理央さまに一生お仕えします』とね」

椿「よ、よ、よ、四葉、あんたねーーーーーーーーーーー!!」
椿の怒りは頂点に達しようとしていた。
四葉「ふむ、なるほど、わざわざ今のこの身体の名前を我に言わせて、さらに我の身体のお前を我の名前で呼ぶことによって、今のこの『入れ替わっている状態こそが正常』なのだと、我自身に認めさせたいのだな。名前というものにはそれ自身にある種の力がある。我がこの身体のまま、お前の名前を我の名前として使い続けていれば、いつしか我は身体だけでなく心もお前自身になってしまうだろう。お前が言いたいのはこういうことだろう?」
理央「くくく、そのとおりよ、回答としては上出来よ。でもまだ私を『お前』呼ばわりしているのが気にくわないわねぇ。ふふふふ、この身体はもう私のもの。絶対に、返してあげたりなんかしないわ。だから、あきらめて四葉として生きる道を選んだら?」

椿「こ、このアホ四葉ぁ!!魔王長さま、もう我慢できません!!魔王長さまの身体相手では敵わないかもしれないですが、私は四葉を攻撃します!あのアホは痛い目みないと分からないんですよ!!」
椿は懐から愛用のカードを取り出し、両手の指に計8枚のカードを挟み、顔の前で手と手をクロスさせるようにして構えた。
理央「私に楯突く気?別に構わないけど、そのカードを投げて傷つくのは誰の身体かしら?」
椿「あ・・・」
椿の、カードを構える指から力が抜けた。
そうだ、今の四葉の身体を傷つけるということは魔王長さまの身体を傷つけるということだ。
今の状態では、こちらから全く手出しが出来ない。
魔王長と四葉の身体が入れ替わっている今の状況は、あまりにも四葉にとって有利すぎる。
椿は悔しさのあまり歯噛みした。

理央「くくく、そうそう、どうせお前はなにもできないんだから、おとなしくしてなさい、椿」
椿「くぅ~~~~~~~アホ四葉~~~~~~後で覚えておきなさいよ!!」

理央「ふふふ、さぁて四葉、私はあんまり気が長くないよのねぇ、あんまり私に服従に態度を見せないんなら、ちょぉっと、痛い目みてもらおうかしら?」
理央は、階下に居る四葉に向けて、右手をあげ、さらに手のひらを四葉のほうへ向けた。
椿「あ、あれは・・・!」
椿は、人間界で理央が手のひらから光球を出す技を思い出した。
あの技自体は、それほど高等な技ではない。
自身の魔力を球状に固めて撃ち出す、攻撃魔法の中でもかなり初歩のものだ。
椿も、一応は体得している。魔力攻撃よりカードを使った攻撃のほうが得意なため、使わないだけだ。
四葉は、そもそも魔力の上限が低いため、撃ったとしても大した威力ではない。それでも、戦闘員になるためのトレーニングの一環として、その方法ぐらいは知っているはずだ。
人間界では、身体能力的にかなり劣っているはずの四葉の身体で撃った光球も、かなりの威力があった。
では、正真正銘、魔界一の魔力を持つ魔王長・理央の身体であの光球を、もし全開の威力で撃ったら。
今の、ひ弱な四葉の身体の理央ではひとたまりもないだろう。

椿「こ、こら、アホ四葉!!しゃれにならないことはやめなさい!!あなた、今自分がなにしようとしているのか本当に分かってるの!?」
理央「だーーーいじょーーーぶよぉ。ちゃあーーーーーーんと手加減して撃ってあげるからぁ。私が全開で撃ってあっさり死んじゃうより、適度に痛い目遭わせて、元の自分の身体に「様」付けで呼ばせてペコペコさせながら、下僕としてゴミクズみたいになるまで一生働かせ続けるほうが、面白いと思わない?」
椿「こ、この・・・ここまで性格悪いとは思わなかったわ!!魔王長さま!ここは一旦お逃げください!この私が、命にかえてもお守りしますから!」
椿が四葉を守るため、四葉へ向かって駆け寄ろうとする。
すかさず、理央は手のひらの椿に向け直して、牽制する。
理央「椿、おとなしくしててよ。先に消されたい?」
椿「くっ・・・!」
椿は足を止めた。あの光球の威力を間近で見て知っているだけに、本能的に体が止まってしまう。
しかし、魔王長さまのためならこの身、いつでも差し出す覚悟は出来ている。
もし本当に四葉が魔王長さまを撃ったなら、この身を挺してでも魔王長さまを守る。
椿はいつでも、四葉の前に飛び出して我が身を盾に出来るよう、ゆっくりとだが四葉との距離を詰めている。

そして、理央と対峙している四葉はというと。
さっきから変わらず、胸の前で腕を組んだ姿勢で、余裕のまなざしを頭上の理央に向けている。
口元には、かすかに微笑が浮かんでいる。

理央「気に入らないわね、そのニヤついた顔、余裕しゃくしゃくって感じの目が・・・私は魔王長よ・・・私が望めば何でも叶うのよ・・・私に逆らえる者なんていないのよ・・・ふふ・・・くくく・・・手加減してあげようと思ったけどやめたわ・・・全力で消し炭にしてあげる・・・」

理央の遙か階下には、腕を組んで悠然と構えている四葉がいる。
四葉はさっきからずっと、視線を理央に向けたままだ。

理央「・・・お前の・・・その目が・・・」
理央の手のひらが白く輝き、小さな火花が飛び散る。

理央「ムカつくんだよぉっっっ!!このクソアマがぁぁぁっっっ!!!!」

理央の手のひらに巨大な光球が出現した次の瞬間、それは四葉に向かって打ち出された、
と、思われたその瞬間。

バシィィィィィィィィィッッッッッ!!!

巨大な光球は手のひらを離れたと思われた瞬間、数え切れないほどの細かな光の粒となって宙に溶け込むように霧散、消滅した。
そしてまるで光球の代わりのように、まだ光輝いている手のひらから幾筋もの光の筋が伸び、一瞬にして理央の全身に巻き付いた。

理央「へ?」

理央の全身を取り巻いている光の筋は、まるで実体を持っているかのように集束し、理央の身体をきつく締め上げ始めた。
ぎゅううううううううううううううう
光のロープに全身を拘束された理央は、右手を前に突き出した格好のまま、身動きがとれなくなってしまった。
理央「な、な、な、なによこれぇぇぇ!!??」
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by irekawari | 2007-05-31 23:54 | 女同士入れ替わり

狙われた少女 その6

椿と、四葉の身体に入っている理央は人間界を後にし、ようやく魔界まで帰ってきていた。

椿「魔王長さま、お疲れになっていないでしょうか?今からでも、お車を手配いたしましょうか?」
四葉「大丈夫だ。たまには自分の足で長時間歩くのもいい運動になる・・・といっても今の我の足は四葉の足だから、自分の足というわけではないが」
椿「そうですか。四葉といえば・・・あの子、ほんとうにちゃんと魔王長さまの代わりができてるのかしら?」


四葉「椿、まだついてくるのか?今日はもうお前は休んでいいぞ」
椿「そうはいきません、私はあの子の上司ですから、四葉が魔王長さまの代わりに留守を預かるという大任を全うできたかどうか、見届ける義務があります!」
四葉「ふっ、普段四葉にお小言言ってばかりのお前でも、長い間離れていたら心配になるようだな」
椿「えっ、ち、違いますよぉ!私は仕事を通して上司と部下として気にかけているだけであって、個人として四葉が気になっているわけではありませんから!あーんなお気楽ノーテンキで、仕事中でも甘いもの食べることしか考えてないような幸せのーみそな子のことなんて気にかけていたら心労でこっちが倒れちゃいますよぉ!」
椿は妙に慌てて早口でまくし立てる。気のせいか顔が少し赤い。
四葉「それだけ心配してもらえれば四葉も幸せだな」
椿「だから、違いますってぇ!!」

四葉「ははは・・・さて、四葉、今帰ったぞ」
四葉は部屋の中へ声をかけながら、魔王長の私室の扉を開けた。
四葉「今日一日、我の代役ご苦労だった」
椿「四葉!あなた、魔王長さまの身体でなにかとんでもない失敗してないでしょうね!」
四葉「・・・む?」
椿「あら?」
四葉と椿は扉を開け、魔王長の私室に入ったが、そこに理央の身体の四葉の姿はなかった。
四葉「おかしいな、四葉とはこの時間、この部屋で待ち合わせるよう伝えていたのだが」
椿「えっと・・・おトイレでしょうか」
四葉「かもしれんな。少し待つとしよう」

四葉と椿は魔王長の私室で理央が来るのを待った。
しかし5分立っても10分立っても、理央の身体の四葉は部屋に入ってこなかった。



椿「もう30分過ぎてますね・・・まったくあの子ったら、時間にまでルーズなんだから。魔王長さまをお待たせするなんて、後で厳罰ものだわ!」
四葉「ふーむ・・・」
四葉は右腕のひじの先に左手のひらを添え、そのまま右の手のひらの根元部分を自分のあごに当てながら、視線を宙に浮かし、なにやら考え事している。
四葉「四葉の行き先、我に少し思い当たるところがある。ちょっと行ってくる」
椿「え、ちょ、ちょっとお待ちください、私も付いていきます!」
しっかりした足取りで部屋を出て行く四葉の後を、椿もついていった。

四葉が向かった先は、謁見の間だった。
今は誰もいなくて、あたりはシーンとしていて静かだ。
椿「魔王長さま、ここって謁見の間ですよね、こんなところに四葉が・・・」
椿があたりをキョロキョロ見回しながら、ふと四葉のほうを見ると。
四葉は椿に背を向けて立っていた。
四葉は立ち止まり、首を少し上に向けて、前方のある一点をみつめている。
椿「魔王長さま?」
たしかこの先にあるのって・・・
椿がこの先にあるものの映像を頭の中に思い浮かべようとしていたとき。

理央「おーーーーーーーーほっほっほっほっほ!」
椿「んな!?」
突然、謁見の間全体に響き渡るような、大きな高笑いが聞こえてきた。
とても聞き慣れた感じのする少し低めの女性の声、しかし高笑いそのものはすごく品がなく、その声質と高笑いのギャップがものすごい。
椿は、そういえば今日人間界に行ったときも、こんな高笑いを何度も聞いた気がする、と、なんとなくいやな思い出を思い出していた。

理央「ふふふ、わたしのためのお仕事お疲れ様、椿、そして四葉」
謁見の間は奥が階段状になっていて、今四葉や椿がいるところより20段ほど高くなっている。
そして一番高い段には、黄金でできた玉座がある。
言うまでもなく、この魔界を統べる王・魔王長のための玉座である。
そして今、その玉座には、理央が、いや理央の身体の四葉が、座っていた。






狙われた少女 その6






椿「こらーーーー四葉!あんた今、あたしのこと呼び捨てにしたわねーーーー!?上司の私にむかってよくもそんな口を・・・ってそれよりも、あんたさっき、四葉って言った!?それってまさか魔王長さまにむかって言ってるんじゃないわよね!?それに魔王長さまの玉座に座るなんてなんて恐れ多い・・・!!あのね!私は魔王長さまに事情聞いてぜーーーーんぶ知ってるのよ!!あなたが魔王長さまと入れ替わっていることも!!だから、変な小芝居やめて、さっさと降りてきなさーーーい!!」
椿が、高い場所に居る理央に向かって、手を振り上げて一気に抗議の言葉をまくし立てた。
理央「あら?部下を呼び捨てにすることが、そんなにいけないことかしら?」
理央は玉座の背もたれに向かってのけぞり、いっそう椿たちを見下す体勢になって、椿たちを心底馬鹿にするような口調で言った。
椿「な、な、なんですってぇぇぇぇぇ!?」

理央「我は魔界を統べる王の中の王・魔王長の理央。椿よ、頭が高いぞ、ひかえおろう!」
椿「えっ、は、ははぁっ、し、失礼しました!!」
椿は思わず膝をつき、額が床につくかつかないかぐらい、深く頭を垂れた。

椿「・・・・・・・・・・・・。え、あ、あれ、なにしてんの私」
椿は深々と頭を下げながら、ポカーーーーーンとしていた。
聞き慣れた声と、聞き慣れた命令口調と、さらに、見慣れた魔王長さまの姿ということで、ついつい条件反射で、頭で考えるより先に体が動いてしまった。

理央「あははははははは!!隊長が!!あたしに頭下げて謝ってるよ!!あははははは!気っ持ちいいーーーーーー♪」
理央が、玉座に座りながら腹を抱えて、体が「く」の字に折れるほど笑っている。

椿「こ、こ、こいつはーーー!!調子にのってるんじゃないわよ!」
椿は素早く頭を上げ、立ち上がり、片手で握り拳を作って、理央の身体の四葉への怒りを露わにしている。
理央「あらぁ?調子に乗ってるのはどっちかしら?この偉大なる魔王長に向かってこいつなんていう不逞の輩は、たっぷりお仕置きしてあげなきゃね~」
椿「あのねーーー!さっきから聞いていれば、あんたはたしかに今は魔王長さまの身体かもしれないけどねー!それは一時的に入れ替わっているだけでしょーーーが!!また元に戻ったら、あんたはただのヒラの一般戦闘員よ!!あんたなんか、天地がひっくり返っても、魔王長さまや私を呼び捨てになんかできないのよ!?」
理央「それは、もし、『元に戻ったら』・・・の話でしょう?」
椿「へっ、・・・・・・・・・・・なに、四葉、あなたまさか・・・」
理央「そうよ~、なぜ元に戻る必要があるのかしら?」
理央は玉座から立ち上がり、肩にかかっていたマントをばさっと片手でひるがえした。
理央は両手で自分の顔の両頬を包むようにして、
理央「この何者をも魅了する美しい顔」
次にドレスの布地からあふれんばかりの豊満な胸を両手で掴み、
理央「この豊満な胸」
首を少し傾け、頬にかかった薄い茶色のストレートの髪を片手でばさっと掻き上げ、
理央「この艶やかな髪」
そして両腕で自分の身体を抱き締めるようにして、
理央「この抜群のプロポーション」

理央「魔力は魔界一を誇り、権力においてもこの私が一番。私が一声かければ魔界の住民全てがひざまずく。このドレスだって魔界で一番の最高級品。お金だって使い切れないほどあるわ。ふふふ・・・あはははは!!文句なし、最高の身体じゃないの、魔王長の身体は。ふふふふふ・・・魔王長の身体なら、なんでもかなう、なんでも私の思う通りなのよ!!あっははははは!!」

理央「そうよ・・・誰が返すものですか・・・」

理央「これは・・・私の身体よ・・・私が魔王長・理央なのよ・・・ふ・・・ふ・・・あはははははははは!!」


椿「よ、四葉・・・」
四葉の、いや理央の目の中の輝きが、明らかに違う。
今の理央の瞳には、狂気の色が宿っていた。
思えば、ただのヒラの一般戦闘員である四葉が、いきなりこの広大な魔界の、社会的にも、能力的にも頂点に立つ魔王長としての身分・器を手に入れたのだ。
感覚が狂わないほうがおかしいのかもしれない。

四葉「なるほど、言いたいことは大体分かった。我にその身体を返すのはいやだ、我には四葉のこの身体のまま一生を過ごせと、そう言いたいわけだな、四葉?」
四葉は腕を胸の前で組み、両足を揃えるようにして、理央を見上げるようにして、悠然と立っている。
その姿からは、理央の「身体を返さない」という脅しに屈するような弱々しい態度は微塵も感じられない。
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by irekawari | 2007-05-30 23:16 | 女同士入れ替わり

狙われた少女 その5

詩乃(虎美さん)
詩乃は四葉や椿に聞こえないよう、ヒソヒソ声で、一番近くにいる虎美に話しかけた。
虎美(なんだ、詩乃)
詩乃(もうすぐ我が財閥の精鋭部隊が参ります。さっき隙をみて連絡しておきました。わたくしが普段護衛をつけないでいるのが裏目に出てしまっていますが悔しいですわ)
虎美(仕方ないさ、いいところの出なのにそのことに頼りすぎないのは詩乃のいいところだ。とりあえず、その精鋭部隊とやらはいつごろ到着する?)
詩乃(あと5分ほどだと思いますわ)
虎美(5分か・・・まずいな、今の私たちなら2分も経たずにあの魔王長とやらに全滅させられるぞ)
詩乃(そうですわね、でも・・・)
虎美(ああ、やるしかないな。なんとかして時間をかせぐんだ)
詩乃(分かりましたわ、とりあえず菜々子さんにも伝え・・・)

菜々子「霞ちゃんを返せぇぇぇぇぇぇ!!!」
みると、菜々子が大声をあげながら四葉のほうへ突進していっている。
詩乃「ちょっ・・・・菜々子さん!?いきなり突っ込んでいってもやられるだけですわ!!」

菜々子「やあああああああああ!!」
霞「菜々子ちゃん!だめ!止まって!!」
四葉「この我に向かって真正面から来るとは・・・無謀だが、その勇気は褒めてやろう」
四葉は腰を落とし、迎撃の体勢をとった。
四葉「せめてもの情けだ、痛みを感じる暇もないぐらい、一瞬で仕留めてなる」
四葉が腕を水平に構えたまま、菜々子に向かって駆けだした。
武器もない。格闘技の経験もない。突進していって、なにか策があるわけでもない。おおよそ戦うことに向いていない菜々子だが、霞のために、大事な友達のために、なにかをしたい、という思いだけが菜々子の体を突き動かしていた。
菜々子「霞ちゃんを返せぇっっっっ!!」
四葉「まずはお前からだ」

菜々子と四葉が激突すると思われた瞬間。

ドシュッッ
ドシュッッ
ドシュッッ
ドシュッッ

なにかが発射するような音が響き渡った。

虎美「な、なんだ!?」
詩乃「なんですの!?」
椿「なんだ!?」
霞「菜々子ちゃん!!」
菜々子「やあああああああああ!!」
四葉「むっ!?」
なにかが自分に向かって飛んできている。
本能的に「それ」を察知した四葉は片足を地面につき、急停止した。
菜々子「わ・・・きゃあ!?」
四葉が急に止まったため、菜々子は四葉にぶつかりそうになる。
四葉「邪魔だ」
四葉は片腕を振って、自分に突っ込んできた菜々子を拳ではじきとばした。
菜々子「うあっ!」
ドドッ
2~3メートルふっとび、地面に落ちる菜々子。
詩乃「菜々子さん!」

四葉は菜々子には目もくれず、飛来音のするほうへ振り返る。
ドドドドン!!
4本の長細い筒のようなものが四葉の足元を囲むように命中した。
その金属製の筒から細長いアンテナのようなものが伸び、次の瞬間。

カキーーーーーーーン

四葉「なに!?」
一瞬にして四葉の胴体から下が氷に覆われた。
氷は四葉の下半身を完全に覆い、さらに地面にも伸びているので、完全に身動きがとれない格好になった。

あかね「どやどやーーーーーー!?みたか、うちの発明品!!!!」

四葉や菜々子たちの頭上から、突如、関西弁が響き渡った。


詩乃「な、なんですの!?人?」
虎美「あのビルの屋上だ」
見上げると、近くのビルの屋上に、背中に大きなリュックみたいなものを背負い、手には大きなバズーカみたいなものを2丁持っている少女が立っている。リュックからはさらに金属製の筒みたいなものが何本も伸びていて、遠くからだとその姿はハリネズミのように見えた。


あかね「待ちに待ってた出番が来たで!!ここはおまかせ、浪速(なにわ)の偉大なる発明家、高槻あかねとはうちのことや!!!!」

その、ハリネズミみたいな姿の少女が高らかに叫んだ。

あかね「おーーーーーーい、そこの、えーと詩乃と菜々子いう名前やったっけ?うちのクラスメイトやろ?このあかねさんが、助けたるでぇ!!」
虎美「詩乃、お前のクラスメイトとか言ってるぞ?誰なんだ、あいつは」
詩乃「え、えーと、見覚えはあるのですが・・・・あ、思い出しましたわ、今朝の転校生!!」
菜々子「あーーーーーーっっ!!あかねちゃんだーーーーーーー!!来てくれたんだーーーーーー!!すごーーーい、やっぱりあかねちゃんは5人目の仲間だったんだ!!」
さっき四葉にはじきとばされて派手に吹き飛んだ菜々子は、多少傷は増えているものの、立ち上がってあかねを見上げて、顔を輝かせている。

四葉「お前もあの者たちの仲間か?」
あかね「まあそんなとこやなー。それより、どやどやー?うちの特殊冷凍弾の威力は?身動きとれへんやろ?」
四葉の下半身はまだ完全に氷に閉ざされたままだ。
椿「魔王長さま、今お助けします!」
椿は霞を拘束していた手を放し、カードを構え、カードで四葉の下半身の氷を砕こうとした。
四葉「椿、後ろだ!」
椿「え!?」
四葉に声をかけられ、椿が後ろをふり向いた瞬間、虎美が跳躍して飛び込んでくる姿が目に入った。
椿が氷漬けの魔王長に気を取られていた隙に、虎美が椿の背後に回り込んでいたのだ。
椿「いつの間に!?」
虎美「遅い!」
椿は慌ててカードを虎美に向け直そうとするが、それより早く、虎美が椿の手首を蹴り上げていた。
ガッ!!
パラパラパラパラパラパラ
手首を蹴り上げられた衝撃でカードが椿の手から離れ、何十枚ものカードが宙に浮かぶ。
椿「ま、魔王長さまからいただいたカードが!!」
虎美「大事なものらしいが・・・気をとられすぎだ!」
虎美より、宙を舞うカードに気をとられている椿の足元を、虎美の足払いが襲いかかる。
椿「あっ!」
ドスン!
足払いをまともにくらい、地面に倒れる椿。
虎美「霞、逃げるぞ!」
霞「は、はい、ってきゃあ!?」
虎美は霞をお姫様抱っこして走り出した。
二人一緒に走るより、このほうが速いと判断したためだ。
椿「ま、待て、逃がすか!」
素早く起きあがった椿が、虎美と霞を追いかけようとする。
そこへ。
ドドドドン!!
さきほど四葉に向かって打ち込まれたものと同じ金属製の筒が4本、椿の足元に命中した。
椿「しまった!」
カキーーーーーーーン!!
椿の下半身も、四葉同様、分厚い氷で覆われてしまった。

あかね「よっ・・・と」
地面にいる椿に向かって構えていたバズーカの先端を降ろし、勝ち誇った笑みで反り返るあかね。
あかね「第2弾命中ーーーーーーーーっ!!うちの発明品は無敵や!!さあさあどないや?しっぽまいて逃げるなら今のうちやでーーーーー?」

椿「おのれ・・・人間のぶんざいで、こしゃくな!」
四葉「ふむ・・・あれが人間の持つ『科学』というやつか」


菜々子「霞ちゃああああああああん!!」
霞を救出した虎美は、霞を抱き上げたまま、菜々子たちのところへ戻ってきた。
詩乃「霞さん、ご無事でなによりですわ」
虎美「まだ安心はできない、あのあかねという子が氷漬けにしてくれているが、あの魔王長の実力なら、すぐ脱出してしまうぞ」
霞「あ、あの・・・虎美さん」
虎美「ん?なんだ、霞」
霞「降ろして・・・ほしいんですが」
霞は顔を真っ赤にしている。
虎美はまだ霞をお姫様抱っこにしたままだった。



ドォン!!
突然、一際派手な音がした。
パリィィィィィィィィィィン
次に、ガラスが砕けるような音がした。
見ると、四葉の下半身を覆っていた氷が、粉々に砕け散っている。
砕けた氷はまるでスローモーションのようにゆっくりと宙に舞い、ややオレンジ色に染まり始めた太陽の光を受けてキラキラと煌めいている。
四葉が例の光球を、自分の下半身を覆っている氷に向けて放ったのだ。

あかね「な、なんやーーーーー!?飛び道具なんて、卑怯やで!!」
四葉「お前がさっきから撃っているそれも、飛び道具ではないのか?」
あかね「これは飛び道具やないで!うちの偉大なる発明品ナンバー35!!『瞬間冷凍くん』やーーー!!」
詩乃「要は飛び道具じゃありませんか・・・」
詩乃があきれたようにつぶやいた。



キキィーーーーーーーッッ!!
またまた、大きな音が響いた。
菜々子「わ、なんかいっぱい車が集まってきたよ!」
虎美「やっと来てくれたようだな・・・」
詩乃「もうっ!遅いですわよ!!」

さっきの音は車のブレーキ音だったようだ。
ざっと見渡しただけでも20台以上の車がこのあたりに終結している。
車からは黒服にサングラス姿の男が一斉に出てきて、四葉と椿のまわりを半円状に包囲した。
黒服のうちの一人が、詩乃の元にやってくる。
黒服「お嬢様、ご指示を」
詩乃「とりあえず現状維持ですわ。こちらからは手を出さないこと、いいですわね?」
黒服「はっ!」
詩乃「これで、あの者たちがあきらめてくれればいいのですが・・・」


四葉は、自分を取り囲む大勢の黒服を見渡した。
四葉「ふむ・・・さすがに人が多すぎるな。無用な騒ぎは起こしたくない」
椿「ま、魔王長さま~」
四葉「椿。」
椿「は、はいっ!」
四葉「帰るぞ」
椿「えっ!?か、帰る・・・のでありましょうか?」
四葉「霞を連れてくることはできなかったが・・・別に急ぐ必要もない。以降については、また椿と四葉、お前たち二人に任せる」
椿「は、はい!分かりました!」
四葉は椿の元へ歩み寄り、自身の氷を砕いたように、手からの光球で椿の氷も砕き、椿を自由にした。


四葉「霞。」
霞「は、はい」
四葉「お前にもう少し考える時間をやろう。自らの意志で魔界に来る決心がついたら、椿か四葉に伝えるといい。魔界まで案内してくれる。忘れるな、お前は人間界にいても不幸になるだけだ、魔界に来たほうが、お前の幸せのためだ」
霞「わ、私は・・・」
四葉「我は魔界でお前が来るのを待っている」
それだけ言って、四葉は霞に背を向け、片手をあげて挨拶すると、すたすたと、歩き出した。
椿「ま、魔王長さま!お待ち下さい~」
椿も慌てて、四葉の後を追う。

総勢100名はいるであろう黒服たちは、ターゲットらしき女性二人が去っていくのを見て、一瞬、身構えたが。
詩乃「放っておきなさい!!手出し無用ですわよ!!」
詩乃の一言で、二人が歩き去って見えなくなるまで、黒服たちはただ見送るだけとなった。

椿「ま、魔王長さま、よろしいのですか?みすみす見逃してやるなんて・・・」
四葉「私はこれでも気が長いほうだ。霞自ら魔界に来たいと思うまで、待ってやるさ。この件はこれで終わりだ、椿が気にすることではない」
椿「わ、分かりました・・・」
四葉「それと、魔界に帰る前に、ちょっと寄るところがある。椿、お前も付き合え」
椿「え、どこか寄り道なさるのですか?」





黒服「それではお嬢様、我々は撤収します」
詩乃「ええ、ご苦労様」
黒服たちはそれぞれ乗ってきた車に乗り込み、また戻っていった。


菜々子「わーーーい!霞ちゃんが無事でホントよかったよーーー!」
霞「う、うん、菜々子ちゃん、詩乃さん、虎美さん、みんな・・・ありがとう」
詩乃「おーーーーーーほっほっほ!わたくしの手にかかれば、簡単なものですわ」
虎美「私は大したことはしていない、みんなのがんばりのおかげだ」
霞「それと、あかねさん・・・でしたよね、あかねさんも・・・ありがとうございました」
菜々子「そうだったね!あかねちゃんも、霞ちゃん助けてくれてありがとーーーー!!」
詩乃「そうですわね、わたくしからもお礼を言いますわ」
虎美「協力に感謝している」
あかね「あっはっはっは!ええて、ええて!そんな堅苦しい挨拶は!!うちは、うちの発明品で困っている人が助かれば、それでええんや!!」

詩乃「でもすごいですわね、あの魔界の人たちを相手にするのはけっこう怖いですのに、臆せず立ち向かっていけるなんて、凄いですわ」
あかね「え?なんやの?魔界のモンって」
詩乃「え?えーと・・・ほら、あの人たち、頭に角生えているじゃないですか。手から変な球出したりして・・・あの人たち、人間じゃないんですわよ?」
あかね「へーーーそうやったの?角生えとんは見えたけど、てっきりなんかのアニメのコスプレかと・・・」
詩乃「コスプレじゃありませんことよ!わたくしもあんまり非現実的なことは信じたくありませんが、あの人たちはこことはまた違う世界、魔界から来た魔界人の方々なのですわ!」
あかね「へーーー、それは驚きやなーーー。せやったら、もっと細かくデータとっといたほうが、次の発明の役に立ったかもしれんなー、惜しいことしたわー。
詩乃「あ、あかねさん!?相手が誰かも知らずに戦ったり、助けてくれたりしていたんですか?」
あかね「うん。うちはなーんも知らへんで。たまたまここを通りかかったら、なんか頭に角生やして悪そうなのと、クラスメイトで顔知っとるんがなんか戦ってるみたいやから、こりゃもううちの発明品を披露する絶好の機会やな!!ってことでこの『冷凍くん』を使ってみたんやー。いやー、『冷凍くん』使うんは今日が初めてやけど、うまく凍ってくれてよかったわー」
詩乃「あ・・・頭痛くなってきましたわ。このお気楽さは・・・菜々子さんがもう一人増えたみたいですわ」
菜々子「なんでもいいよ!あたしたちを助けてくれたんだから!!あかねちゃんはあたし達の5人目の仲間だよ!」
あかね「ん、なんやのん、5人目って?なんか面白そうやなー」
菜々子「あのね、あたしが赤でね、霞ちゃんがピンクでね、詩乃が黄色なの!虎美ちゃんは、まだ決めてないけど、あかねちゃんは、何色がいい?」
詩乃「ちょっと菜々子さん!いつの間にわたくしが黄色になってるんですの!わたくしは大食いでもカレー好きでもありませんことよ!」
菜々子「カレー好きなんて言ってないよ~」
詩乃「言ってるようなものですっ!!」


虎美「やれやれ・・・命の危険もあったぐらいだというのに、みんな元気だな」
虎美は腰に手をあて、菜々子・詩乃・あかねをあきれたような表情で見ている。
霞「・・・・・・・・・・・」
虎美「霞?」



四葉「我はお前の母だ」

ついさっきの、四葉、いや魔界の王・魔王長の言葉が霞に重くのしかかっていた。
自分の半分は人間ではない。
角のような、分かりやすい特徴はないが、おぼろげながら、自分が普通の存在でないことが、分かってしまう。
さっきも、菜々子に危機が訪れたとき、自分が『力』を発揮したことにより、菜々子を助けることができた。
菜々子が助かったことは嬉しいが、あの事例1つとっても、自分が「人間ではない」と実感するには十分だ。
そして、魔界の住人が自分を執拗に狙ってくる理由も分かった。
このままここに居ては、またみんなに迷惑がかかる。
でも大事な友達であるみんなと離れたくない。
みんなのためにここを去るべき、という気持ちと、
みんなと一緒に居たい、という相反する気持ちが、霞の中でせめぎ合っていた。



虎美「霞。」
霞「えっ。あ・・・何?」
虎美の声で、霞はようやく自分が虎美に呼びかけられていることに気付いた。
虎美「大丈夫か?まだどこかケガでもしてるのか?」
霞「う、ううん、大丈夫、私はほとんどケガしていないから・・・」
虎美「ならいいが・・・なにか悩みがあるなら遠慮無く言うといい、なんでもため込むのは霞の悪い癖だ」
霞「そ、そうだね・・・」
霞(そうだ、みんなはあの人が私の本当のお母さんで、私が魔界人と人間のハーフだってこと知らないんだった・・・どうしようかな・・・みんなに言うべきかな・・・でももしみんなが、私が人間じゃないって知ったら・・・今までのように、友達でいてくれるのかな・・・)

菜々子「かーーーすーーーーみちゃん!!」
霞「きゃ、きゃあああ!!??」
突然、菜々子が霞に抱きついてきた。
菜々子「霞ちゃんもお腹すいたでしょ!みんなでこれからどこかに食べに行こうって話になったんだ!霞ちゃんも一緒に行こ!!」
詩乃「わたくしは別にお腹なんてすいていませんけどね。まったく、菜々子さんは食いしん坊なんですから」
あかね「うちも付き合うで!今後の発明のためにも、その『マカイジン』とやらの話もゆっくり聞きたいし!」
菜々子「というわけで、霞ちゃんも行こ!!この間見た雑誌に載ってた、ケーキが美味しい喫茶店がこの近くにあるみたいなんだー、そこ行ってみようよ!今日は大勝利&5人目のあかねちゃん加入記念ってことで、あたしがおごるからさ!」
詩乃「あら、菜々子さんがおごってくださるなんて珍しいですわね」
菜々子「珍しくないよー、あたしだってたまにおごるときあるもん!!」
虎美「私は今日けっこう動いたからな、2人前ぐらい食べてもいいということかな?」
あかね「むむっ!?大食いならうちも負けへんでーーー!あんさんが2人前なら、うちは3人前食べたるで!」
菜々子「えーー、ちょっと待ってよ、そんなに食べたら、あたし、今月分なくなっちゃうよ~」
詩乃「あら、しっかり『おごる』って言っていたのはどこのどなたからしら?」
菜々子「限度ってものがあるよ~、みんなの意地悪~」
詩乃「おーーーーほっほっほ、まあ、どうしても足らない場合はわたくしが出してあげますわよ、安心なさい」
菜々子「だって!霞ちゃんだけ返事聞いてないよ、どうする?」
菜々子は子供のような純真無垢な笑顔で、霞に向かってきいてくる。
その笑顔は、霞の心にかかっていたもやもやを吹き飛ばすのに、十分な笑顔だった。
霞「う、うん。私も・・・行きたい・・・な」
菜々子「よーーーーし決定!!5人で突撃ーーーーー!!」
詩乃「菜々子さん、なにが突撃ですの!?」
虎美「ふふっ・・・」
あかね「あははー、なんや、みんなおもろいのばっかりやなー」
霞(今は・・・まだ、みんなと一緒に居て・・・いいよね)
街中の景色が夕日に染まる中、菜々子の号令のもと、目的地の喫茶店に向かってなぜか駆けだしていく菜々子・詩乃・虎美・あかねの4人の後ろを、やや遅れながら、しかししっかりとした足取りで追いかけている、霞の姿があった。






続く。



後書き

あれ?またギリギリ投稿間に合ったと思ったら、過ぎてしまっている・・・
(T-T)
うちのPCの時計、遅れているのかな・・・

あかねが登場直後ぐらいに言っている台詞は、タイムボカンシリーズの『逆転イッパツマン』の主役・イッパツマンの、「待ちに待ってた出番が来たぜ ここはおまかせ 逆転イッパツマン!」という名乗り口上が元ネタ。
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by irekawari | 2007-05-30 00:05 | 女同士入れ替わり

狙われた少女 その4

四葉「ほう、あの椿ですら完全には敵わないとは・・・人間にしてはやりますね。椿、少し下がっていなさい。ここは私が相手をします」
椿「魔王長さまがお一人でですか!?わ、私も手伝います!」
四葉「椿、・・・下がっていなさい」
椿「は、ははっ!」

椿「魔王長さまの命令だ。娘、お前の身柄は私が預かる」
霞「お願い、私はどうなってもいいから、みんなには手を出さないで!」
椿「お前がおとなしく我々と一緒に来ないからこうなるのよ。」
霞「・・・・・・・そうだ、みんな私のせいなんだ・・・」
霞は、菜々子たち友達といつまでも一緒に居たいと思っている。
しかし、それは逆に皆に迷惑をかけてしまうのだ。
しかも、たった今知ったことだが、自分には半分は人間ではなく、魔界人であるという。なら、人間界にいるべきではないのでは・・・
霞の中で、いろんな思いが交錯していた。

椿「まあ、あの人間たちとの追いかけっこも今日までね、魔王長さまの手にかかれば、どんな人間も一撃だわ」
霞「そ、そんな・・・」
今、決断すべきなのか。
自分の母だと名乗るこの女性についていけば、みんなは助かる。
でも・・・でも・・・



四葉が、菜々子たちがいるほうへ歩み寄っていく。
四葉「初めまして、人間たち。私は魔界で魔王長を務めている。私は忙しい身でな、四葉や椿のように気軽に魔界を離れることができない。だから、今日は四葉の身体を借りて人間界に来ている。四葉のこの身体では、私の本当の力の十分の一も出せないが・・・それでも、貴様ら人間たちを二度と立ち上がらせなくするぐらいは簡単にできるぞ」
虎美「魔王長・・・だって?奴らの親玉か・・・」
詩乃「身体を借りている・・・なるほど、そうでしたの。どうりで、見た目は同じでも別人みたいな雰囲気だったわけですわ」
菜々子「えー、なになに、どういうこと?あの人って、いつもの四葉って人じゃないの?」
詩乃「あの方がきちんと説明してくださったでしょ!?菜々子さん、あなた人の話聞いてるんですの!?」
菜々子「うーん、あんまり長い話は覚えらんないよー」
詩乃「あなた本当に高校生ですか!」
虎美「面倒なのであの女はもう魔王長と呼ぶぞ。魔王長の言っていることは本当だ、さっき私は魔王長の攻撃を食らったが、威力は本物だ。私なら何発か耐えてみせるが、菜々子や詩乃がくらったらひとたまりもないぞ」
詩乃「ふん、要は当たらなければいいのですわ。友人を見捨てるほど、私は落ちぶれてはおりませんの」
菜々子「あたしもがんばるよ!ぜったい、霞ちゃんを取り戻すんだ!」
虎美「菜々子、詩乃、しかし・・・」

四葉「無駄口を叩いている暇はないぞ」
四葉の手のひらにバチバチと小さな稲妻を発生させながら、光球が発生する。
虎美「菜々子、詩乃、よけろ!」
四葉の手から光球が放たれ、菜々子の足元めがけて飛ぶ。
菜々子「やーーーん!」
虎美の言葉に反応して、菜々子が横っ飛びに飛んだ直後、菜々子がいた地面に光球が命中する。
ドゴーーーーーン!
大きな爆発がし、あたりに爆煙が舞う。アスファルトで舗装された地面はえぐれ、下の土が見えている。
菜々子「ひえ~」
詩乃「菜々子さん、早くこっちに!」
四葉「遅い」
詩乃「なっ・・・」
ゴッ
一瞬にして接近してきていた四葉に反応できず、詩乃は腹にまともに膝蹴りをくらってしまう。
詩乃「ぐ・・・げふっ」
詩乃は思わず膝をつき、さらに四つんばいになって、胃の中にあるものを全て吐き出した。
四葉「我は飛び道具しか撃たないとは言っていないぞ」
虎美「貴様!よくも詩乃を!」
虎美は四葉の背後から、跳び蹴りを見舞おうとした。
しかし四葉はそれをわずかに上体をそらしただけで避け、着地寸前の虎美を足をすくった。
虎美「ぐっ!?」
着地の衝撃に備えていたはずの足をすくわれ、バランスを崩し、そのまま地面に激突する虎美。
四葉「立て」
四葉は腕を組み、直立不動の姿勢のまま、地面に倒れている虎美を見下ろしている。
虎美「言われずとも・・・!」
素早く起きあがった虎美はダッシュで間合いを詰め、その勢いのまま回し蹴りを見舞った。
虎美(肋骨ぐらい折れるかもしれんが・・・この際手加減はせん!)
ガッ
虎美「うぁっ!?」
虎美の蹴りは四葉の脇腹まで届かなかった。四葉は肘と膝で挟み込むように虎美の足をガードしていた。
肘と膝を使っているため、自身をガードするだけでなく、虎美の足にも痛烈な一撃を与えている。
四葉「その足ではまともに踏ん張れんだろう」
虎美「ま、まだまだ!」
虎美は痛めていない左足で攻撃するため飛び上がろうとするが。
虎美「くっ!」
跳躍するために地面についた右足をさっきの四葉の攻撃で痛めているため、踏ん張りがきかず、跳躍するどころが自らバランスを崩してしまう。
四葉「ここまでだな」
四葉は虎美のふところに飛び込み、肘をみぞおちに叩き込んだ。
虎美「・・・・・・!!」
詩乃に続き、虎美が膝をついた。
四葉「あと一人か」

菜々子「あ、あたしだって・・・」
菜々子が、よく分からない決めポーズらしき構えをしていると。
正面から、四葉が放った光球が襲ってきた。
菜々子はとっさに両手で防ごうとしたが、防ぎきれるはずもなく、光球をまともに食らい、吹き飛んでしまう。
四葉「二度は外さん」

苦しげに呻く虎美を足元に、四葉が片手を菜々子が吹き飛んだ方向へ突き出したポーズで立っていた。


椿「すごーーーい!魔王長さま、あっという間でしたわ!」

四葉「無駄な時間をとってしまったな。さあ、行こうか霞。」
霞「み、みんな・・・」
魔王長の数回の攻撃で、ほとんど身動きできないぐらいダメージを負った菜々子・詩乃・虎美の3人。
みんな、私のために・・・
そう思うと、霞の目から涙がこぼれた。
自分には、母と名乗る魔王長に対抗できるほどの、腕力も、知恵も、武器も、なにもない。
自分に出来ることはたったひとつ、おとなしく、魔界についていくことだ。
菜々子ちゃん、詩乃さん、虎美さん、みんな・・・

・・・・・・さようなら。

霞は、心の中で友人たちに別れを告げた。
四葉「どうした、霞。まだ、人間界に残るとか言うのではあるまいな?」
霞「いえ・・・一緒に・・・行きます・・・」
四葉「そうだ、それが霞にとって一番いい選択肢だ」

菜々子「霞ちゃん、行っちゃだめ!!」
霞「な、菜々子ちゃん!?」
四葉「なに、我を攻撃を食らってまだ立ち上がるだと・・・?」

菜々子「そんな人たちの言うこときくことないよ、その人たち、悪い人なんでしょ・・・だいじょうぶ、あたしが、霞ちゃんを、助けるから・・・」
菜々子は腹を中心に大きく焼け焦げた跡がついている。片手でお腹を押さえ、フラフラした足取りで、顔を苦痛に歪めながら、それでも霞に向かって微笑みかけ、ゆっくりと、霞たちのほうへ向かって歩いている。
霞「菜々子ちゃん!菜々子ちゃん、すごいケガしてるじゃない!菜々子ちゃん、もうじっとしてて・・・私のことはもういいから・・・」
菜々子「ともだち、見捨てるなんて、出来ないよ・・・またみんなで、一緒に遊びに行こうよ、あ、その前に、中間試験があるよね、あたしバカだから、あんまり勉強してないんだ、霞ちゃん、また勉強教えてくれたら嬉しいな、それと、霞ちゃんにはピンクの人になってもらうって、決めてるから・・・」
霞「菜々子ちゃん・・・もういい、もういいよ、私のことなんか!」

詩乃「チャランポランな菜々子さんにしては、いいこと言うじゃありませんか・・・わたくしだって、霞さんを見捨てるつもりはありませんことよ」
虎美「私もだ・・・霞、お前をどこにも行かせやしない!」

霞「詩乃さん、虎美さん・・・」
四葉「人間というのは、どうしてこうあきらめが悪いのだろうな。我が人間を殺しても何のメリットもないのだが・・・邪魔するのなら仕方あるまい」
がっ。
霞が、四葉の左の手首を掴む。
四葉「む?どうした、霞」
霞「私・・・やっぱり魔界へは行きません・・・」
四葉「ほう・・・」
霞「私も・・・私も戦う・・・みんなが私のために傷ついているのに、私ひとりだけ助かるなんて・・・そんなこと出来ない!」
四葉「その心意気は立派だ、成長したな、霞。しかし、霞の力では到底、我には及ばんぞ?」
霞「それでもいい、みんなを見捨てるより、遙かにマシだわ!」
四葉「・・・・・・・・・・・霞、お前へのお仕置きは後でするとして・・・まずはあの人間たちを片付けておくか」
霞「や、やめなさい!わ、私だって本気よ!」
霞は四葉の腕にしがみついていたが、四葉が腕を一振りしただけで簡単にふりほどかれてしまう。
霞「きゃあっ」
四葉「おとなしくしていろ。すぐに片づく」
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by irekawari | 2007-05-28 07:23 | 女同士入れ替わり
アリカ「誰?汚いお婆さんね」
エンヤ「お初にお目に掛かります。この屋敷に、大陸一美しいと噂されるお嬢様がおられるとお聞きしまして、伺わせていただきましたですじゃ」
アリカ「あら、美しいなんて、そんな本当のこと。あたしの美しさは、もう大陸中に知れ渡っているのね」
エンヤ「噂以上のお美しいお嬢様の姿を拝見できて、ワシはもういつ天国に召されてもいいほどですじゃ」
アリカ「あっそ、あんたみたいな婆さんがいつ死んでもあたしには関係ないけど、まあ、今すごく気分いいし、話ぐらいなら聞いてあげてもいいわよ」

エンヤ「ワシはエンヤという、旅のしがない行商人ですじゃ。主に宝石や装飾品を売って生活しとります。実は、お嬢様に差し上げたいものがございますですじゃ」
アリカ「差し上げるって、へー、タダでくれんの?あんた、行商人でしょ?お金なら、あたしが気に入ったものなら、いくでも出してあげるわよ」
エンヤ「いえいえ、そんな恐れ多い。ワシは、ワシが持っているあるものがさらにお嬢様の美しさを引き立てることができればそれで満足なのですじゃ」
アリカ「ふーん、いちいち嬉しいこと言ってくれるじゃない。そこまで言うからには、大したものじゃなかったら即刻この屋敷から叩き出してやるわよ?」
エンヤ「どうぞ、好きになさってくださってけっこうですじゃ。きっと、気に入っていただけるはずですじゃ」
そう言うと、エンヤは袋の中をごぞごぞ手探りで探した後、1つのキラキラ光るものを取り出した。
エンヤ「これですじゃ」
エンヤがそれを差し出し、アリカがそれを受け取った。

アリカ「うわぁ・・・」
それは、黄金で出来たネックレスだった。
ネックレスの本体の中央には琥珀色の大きな宝石がついていて、太陽の光を受けて、その宝石は七色に輝いているように見えた。宝石の周りは細かな装飾が施され、その装飾も、とても美しいものだ。首に引っ掛けるチェーン部分まで黄金で出来ているので、まさにネックレス全体が光輝いているように見える。
アリカ「綺麗・・・」
アリカはしばらくそのネックレスを手に持ったまま、その美しさに見とれていた。

エンヤ「いかがですじゃ?」
アリカ「いい。いいわ、気に入ったわ。ホントにこれ、もらっていいの?」
エンヤ「どうぞどうぞ。そのネックレスも、お嬢様のようなお美しい方につけてもらえて、幸せに思うてるはずですじゃ」
アリカ「そ、そう・・・さっそく、付けてみるわね」
アリカはネックレスの美しさに心を奪われていて、早くこれを身につけたい!と思っていた。
興奮して、心臓の音が高くなるのが分かる。

ああ、早くこれをあたしの胸元に飾りたい。
そして、あたしの美しさをもっともっと引き立てたい。

アリカはネックレスのチェーンについている留め具を外し、2つに分かれたチェーンの両端を両手で持って、そのまま首の後ろに手を回す。ネックレスの本体部分が、アリカの胸元に添えられる。胸元で輝く宝石を見ていると、アリカの心臓の鼓動がさらに早くなる。アリカは少し焦りながら、首の後ろに位置するチェーンの留め具を、手で留めた。

アリカ「はぁ・・・・・・・・」
アリカは思わず感嘆の声をあげた。
自身が光を放っているのではないかと錯覚するほどの輝きを持つネックレスを胸元に抱いたアリカは、たとえようもないほどの恍惚感に浸っていた。

アリカ「ねえねえお婆さん、鏡は持ってないの?早く鏡で、今のあたしを見てみたいんだけど!」

エンヤ「ヒッヒッヒ、鏡なんかなくても、お前さんはすぐに自分の姿をイヤというほど見るようになるよ」
アリカ「?な、なに言ってるの?」」

エンヤ「お嬢さん、これがなにか分かるかい?」
アリカ「あっ、あたしが付けているのと・・・同じ物?」

エンヤ「さてお嬢さん、これからとても驚くものを見ることになるが、あまりのショックに心臓麻痺起こして死んでしまわないでおくれよ」
アリカ「な、なに言ってるのお婆さん、頭おかしくなっちゃったんじゃないの!?」」
エンヤはアリカが身につけているものと全く同じデザインのネックレスを手で持ち、アリカと同じようにまずチェーンの留め具を外し、そのまま自分の首の後ろに手を回し、最後に留め具を留めた。
皺だらけのお婆さんが光輝くような黄金で出来ているネックレスを身につけているのは、とても不釣り合いで、滑稽に思える。

突然、アリカの視界がぐにゃりと歪み、その後視界が暗転した。そしてアリカの意識は底なし沼のような暗い影に飲み込まれ、消えた。

しかしそれは一瞬のことで、アリカはすぐに意識を取り戻した。
「ちょっと、あたしに何をしたのよ!?場合によってはただじゃおかないわよ」
アリカは目の前にいるはずの、行商人のお婆さんに向かって怒鳴った。
が、すぐに違和感を感じた。
声には出せたが、口そのものがなんだか重く、言い方も少しスローモーなものになっていた。
しかも、声が、自分の声とは思えないぐらいヒョロヒョロしていて頼りない。
しかしそれ以上に、アリカは、目の前にいる人物の顔を見て驚いた。
そこには勝ち誇ったような不敵な笑みを浮かべた、アリカ自身が居たからだ。

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アリカ「どうじゃな?お嬢さん。自分で自分の身体を見る気分は?」
「な・・・な・・・なに、なんであたしがそこに居るの?それにあたしの声・・・なんだか変・・・」
アリカ「そりゃ変に感じるじゃろうな。お嬢ちゃんは今ヨボヨボの老婆の、ワシの身体になっておるんじゃからな」
ヨボヨボ!?
老婆!?
アリカは慌てて、自分の身体を見た。
手は皺だらけで、ガリガリに細っていて、ほとんど骨と皮だけだ。手だけではない、手首から腕まで、肌が見えるところは全部皺があり、骨がはっきり分かるほど、肉がない。
無地の灰色のローブを着ており、頭はフードをかぶっていて、袖は長袖、裾は地面にこするほど長いため、手と手首ぐらいしか肌が見えない。
その、骨と皮だけみたいな手で自分の顔を触ってみる。
ゴツゴツと固い感触がし、肌に添わせて指を動かすと、ガサガサと、顔の皺に指がひっかかる。
アリカの肌は、いや身体そのものが、12歳の若さあふれる少女のものではなく、60を軽く越えているような、醜い皺だらけの老婆のものにかかっていた。

エンヤ「ぎゃあああああああああああああああ!!」
アリカは、いやエンヤは「きゃあああああ」と叫んだつもりだったが、喉が高音を出せないため、やや濁った発音で、声色もかなり低いものになってしまっている。
エンヤ「な、な、な、な、なによこれ!?あ、あたしが婆さんになってるわ!?」」
アリカ「ヒッヒッヒ、身体を入れ替えさせてもらったんじゃよ。ワシと、お前さんの若くてピチピチした身体とをな」
エンヤ「い、い、い、入れ替えた・・・ですって!?」
アリカ「これのおかげじゃよ」
アリカは胸元のネックレスの本体部分を手に持って、エンヤに向かって掲げてみせた。
アリカ「これは二人が同時に身につけることによって、身につけた者同士の身体と精神を入れ替えてしまう魔力を秘めておるのじゃ。ヒヒヒ、それによってお嬢ちゃんの精神がワシの身体へ、ワシの精神がお嬢ちゃんの身体に入ったというわけじゃ。くくく、こうも上手くいくとは思わんかったのう」
エンヤ「じょ、冗談じゃないわ!こんな婆さんの身体なんかイヤよ!それに、その身体はあたしのモノよ!あたしの身体、返してよっ!!」
アリカ「ヒッヒッヒ、いやじゃよ。お前さんは家が金持ちであることと自分の美貌を鼻に掛けているような狭い心の持ち主じゃが、たしかにこの身体の美しさだけは本物じゃからのう。ワシはお嬢ちゃんのこの身体が気に入った。今日からこの身体は、ワシのものじゃ」
エンヤ「な、なんですってぇ・・・この、しわくちゃの婆さんがっ!!あたしの身体、返しなさいよっ!」

エンヤはアリカに掴みかかろうとしたが、アリカは素早く身を翻して避けてしまった。
目標を失ったエンヤは体勢を崩し、前のめりに石畳の上に倒れてしまう。
エンヤ「ぐぅっ」
アリカ「ヒッヒッヒ、気を付けたほうがよいぞ、その身体はだいぶガタが来てるから、少し倒れただけでもかなり痛いじゃろ?打ち所が悪いと、うっかり骨が折れてしまうかもしれんぞ。老人は老人らしく、大人しくしとるのが一番じゃ」
エンヤ「くぅ~」
エンヤの目からは少し涙があふれかけていた。実際、倒れたときはすごく痛かった。身体がほとんど骨と皮しかないため、倒れたりするとダメージがもろに骨格に来るのだ。
しかし、この涙は痛みによるものではない。
老人の身体にされ、さらにそのことを逆手にとり、いたぶるような言動・行為をしている、あの老婆が・・・いや今はアリカの身体に入っているため少女、なのだが・・・が許せなくて、悔し涙を流していたのだ。

エンヤが痛みをこらえながらゆっくりと立ち上がる。すると、自分の胸に、あのネックレスが掛かっているのが目に入った。
エンヤ「そ、そうだわ、このネックレスで身体が入れ替わったのなら、もう一度このネックレスを使えば身体が元に戻るんじゃ・・・!?」

エンヤ「そうよ、お互いのネックレスを交換してまた付け直せば、元に戻るんじゃないかしら!?いえ、きっとそうよ!そうに違いないわ!!」
そう言って、エンヤは自分の首に掛かっているネックレスを外そうと、ネックレスの本体部分に手をかけた。
しかし、エンヤがネックレスに手をかけた瞬間、ネックレスはまるで土くれのように黒く変色して、ボロボロに崩れてエンヤの手やローブ、地面に落ちた後、まるで風にかき消されるかのように、消えた。
同時に、アリカの首に掛かっていたネックレスも同じように黒くなった後、地面に落ちて消えてしまった。
エンヤ「な、なにこれ!ボロボロに崩れて、消えちゃった!!」
アリカ「ヒッヒッヒ、残念じゃったのう。そのネックレスは一度使うを効力を失ってボロボロに崩れ、消え去ってしまうのじゃ。お嬢ちゃんとワシはもう二度と入れ替わることはない。お嬢ちゃんは一生、その醜いしわくちゃのババアの身体のままということじゃ。ひゃっ、ひゃっ、ひゃっ」
二度と元に戻れない。一生、老婆の身体のまま。
それは、エンヤの身体の中のアリカにとって、死刑宣告より辛い言葉だった。

エンヤ「そんな・・・そんな、嘘よ・・・」
アリカ「ヒッヒッヒ、そろそろワシの代わりにワシとして生きていく決心がついたかいのう」
エンヤ「こんなの、嘘に決まってるわ!他にも元に戻る方法があるんでしょ!!その方法を教えなさいよ!あたしの、あたしの身体を返してよ!!」
エンヤはアリカに掴みかかった。
アリカ「こ、こらやめんかい」
エンヤ「やめないわよ!やめるもんですか!この身体は、あたしのものよ・・・あんたみたいな婆さんに取られてたまるもんですか・・・さっさと、あたしの身体、返しなさいよ・・・」
エンヤは最初は掴みかかっていただけだったが、次第に興奮してきて、いつの間にか、両手でアリカの首を押さえ込んでいた。
アリカ「ぐ・・・ごほっ!」
エンヤ「さあ・・・早く返しなさいよ・・・」
エンヤは興奮していて、自分が元の自分の身体を絞め殺してしまいそうになっていることに気付いていない。

サム「おい、そこの者、お嬢様になにをしている!」
リフ「お嬢様から離れろ!」
突然、男二人が庭の向こうから声をあげながら駆けてきて、二人の間に割って入ってきた。
アシュナード家の雇われ衛兵、サムとリフである。
見知らぬ老婆がアリカお嬢様を絞め殺そうとしている、という風に見えたサムとリフは、とりあえず力ずくでアリカからエンヤを引きはがし、今はリフがエンヤを羽交い締めにして取り押さえている。
アリカ「うっ、げほげほっ」
アリカは首を絞められていたため、まだ少し咳き込んでいる。
サム「アリカお嬢様、大丈夫ですか?お怪我はございませんか?」

エンヤ「ちょっと、離しなさい!!なんであたしを押さえつけてんのよ!?捕らえるのはあいつのほうよ!?」
エンヤを羽交い締めにしているリフは、老婆が、老人とは思えないほど勝ち気な台詞を言ったことに少し面食らった。
リフ「こら、アシュナード家のご令嬢・アリカ様にむかってあいつとは何事だ!それに、今おまえ、アリカお嬢様を絞め殺そうとしていただろ!?誰かに頼まれてやったのか?言え、言うんだ!」
エンヤ「ちょっ・・・!!お前たちこそ何言ってんのよ!?アリカはあたしよ!?」
サム「はぁ?」
リフ「はぁ?」
老婆の突拍子のない返答に、聞いていたサムとリフが二人同時に間抜けな声を出した。
エンヤ「アリカはあたしで、そこにいるあたしがエンヤって名前の婆さんなの!変なネックレスで身体を入れ替えられて、あたしは婆さんの身体に入れられてしまって、婆さんがあたしの身体に入ってしまったの!あたしと婆さんが、入れ替わってしまったのよ!お前たちもバカ面してないで、早くあたしを元の身体に戻しなさい!」

サム「・・・・・・・」
リフ「・・・・・・・・」
老人とは思えないほどの饒舌さで一気にまくしたてる老婆の言い分を聞いていたサムとリフだが、しばらく無言だった。
サム「なあ、この婆さんって」
リフ「ああ、そうみたいだな。シューツベルグの王立警備団に連絡して、とっとと牢屋にブチ込んでもらおうぜ。それが一番だ」
シューツベルグというのは、アリカが住むこの屋敷から少し離れたところにある、この地方で一番大きな城塞都市の名前だ。
エンヤ「はぁ!?お前達、あたしの話を聞いてなかったの!?あたしがアリカで、あそこに居るのはあたしじゃないのよ!捕まえるならあいつのほうなのよ!それに、捕まえるより、あたしの身体を取り戻すほうが先よ!」
サム「あーはいはい、婆さん、分かった分かった」
リフ「話は警備団の詰め所で、警備団の人たちに聞いてもらおうな。まーとりあえず未遂だし、3日ぐらい牢屋に入っていたら、あとはめでたく釈放してくれるんじゃね?」
エンヤ「だ、誰を牢屋に入れるですって!?本当にあたしがアリカだって分かってんの!?もうっ!ほんとうにお前たち二人は図体ばかりでかくて頭カラッポなんだから!クビにしてやるわ!お前たち二人、今すぐクビよ!」

エンヤが老人とは思えないほどの勢いでまくしたてているのを、アリカは少し離れたところで腕を組みながらのんびり眺めていた。
アリカ(筋金入りの馬鹿娘じゃのう・・・もっと落ち着いて上手く説得すれば、そこの衛兵に、ひょっとしたら信じてもらえたかもしれんのに。ま、ワシにとってはどうでもいいことじゃな。この入れ替わりが元に戻ることはないんじゃから)
ニヤニヤといやらしい笑みを浮かべながら、エンヤとサム&リフのやりとりを見守っている。

サム「おい婆さん。オレらは別にてめーに雇われてんじゃねーよ」
リフ「頭のかわいそうな婆さんだと思って優しくしてりゃあ、つけあがりやがって」
エンヤ「なっ、なによ。ちゃんと分かってくれない、お前たちが悪いんでしょう!?」
サム「なあ、警備団が来る前に、ちょっとぐらい俺らでお仕置きしててもいいんじゃねーか?」
リフ「そーだな、頭悪いんなら、体に覚え込ませたほうがいいと思うぜ」
エンヤ「な、なに、ちょっ・・・やめてよ」

オーダイン「これはいったい何の騒ぎだ?」
そこへ、低めの渋い声をした、長身の男がやってきた。
サム「は、伯爵様!こ、これは・・・その・・・」
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by irekawari | 2007-05-27 18:47 | 女同士入れ替わり
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『豊本隆弘×葉咲マリアの書籍部屋。』


「豊本隆弘」さんと「葉咲マリア」さんが書かれている小説を掲載しているブログです。
タイトルだけ見るとお二人が共同で運営&執筆なさっているように思ってしまいますが、実際は「一人の方が二人分のペンネームを名乗っている」ということみたいです。

小説は長編ストーリーで、現実世界を舞台にした恋愛ストーリー「TiLS.」を書かれた後、現在は現実世界に「異世界もの」の要素も盛り込んだ「Crystal Venus.(仮)」を連載しています。
どちらも全体としては長めのストーリーですが、その中で細かく何話にも分かれていて、1話1話は短めなので、1話ずつ読み進めていくと、サクサクと気軽に読むことが出来ます。
登場人物は皆生き生きとしていて、文章は会話と情景描写がほどよいバランスで、すごく読みやすいです。

小説メインではありますが、作者さんの好きなものを語ったりするコーナーがあったり、小説以外の、読み物のコーナーも充実しています。読み物の中には、長編小説「TiLS.」の登場人物が、作者さんに代わっていろいろ語るコーナーがあり、これは面白い試みだなーと思いました。

書かれている小説そのものには入れ替わり要素はないのですが、作者の豊本さん&葉咲さんが、コメントでいつか物語の中にTSFを織り交ぜたいとおっしゃられているので、その日が来るのを密かに心待ちにしていたりします。





『みのむーのTSFな日記』


入れ替わりもの全般を扱っている、情報系サイトです。
ちょっと前に私のブログで紹介した、コミックエール!VOL.1の『御伽楼館』は、みのむーさんのブログを見て知りました。

とにかく情報が早く、かつ、その範囲もすごく広いです。ジャンルでいえば、ゲームやアニメなど幅広く扱っていますが、やや漫画がメインかな?という感じです。「りぼん」「なかよし」等の少女漫画雑誌など、男だとあまり読まないようなものもカバーされているので、入れ替わりものを探しているときは本当に助かります。入れ替わりものオンリーというわけでもなく、実際に見てみて、入れ替わりではなく「変化系だった」「脳移植だった」「憑依だった」など、実際の分類まで簡単に紹介してくださっているので、情報の実用度もすごく高いです。

ガチガチに情報「だけ」を載せているのではなく、タイトルにもあるように日記っぽい感じで、1つ1つにみのむーさんの簡単な感想が添えられていて、ふつうにみのむーさんの文章を読むだけでも楽しいです。
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by irekawari | 2007-05-26 14:32 | サイト紹介
神城真名(かみしろ まな)は高校一年生の女子。
髪の色は黒で、背中まであるストレート。
顔は美人で、性格はややおとなしめであるが何事にもよく気が付き誰に対しても親切なので、男女問わず真名の人気は高い。
しかし今のところ、真名は付き合っている男子はいない。

ある朝、真名は同級生の入間義蔵に手紙で呼び出され、学校の屋上に来ていた。
朝早い時間帯なので、屋上には呼び出し主・入間義蔵以外の人影は見えない。

入間義蔵(いるま よしぞう)は真名の隣のクラスの男子生徒。
髪は短く刈り上げている。体重は80キロ。そして極度の汗っかきだ。今でも、義蔵が着ている男子の制服が汗で肌に張り付いているのが見える。当然体臭もきつい。いつもオドオドしていて暗い性格なので、男女共に嫌われている。

校舎の三階から屋上へ出る扉の入口に真名の姿をみつけた義蔵は、真名の元へ近づいてきた。


真名「入間くん、何の用かしら」
義蔵「ま、真名ちゃん、俺、入学したときからずっと真名ちゃんのことが好きだったんだ。ぼ、僕と付き合ってください」
真名「えっ・・・ご、ごめんなさい。私、今は男の人に興味なくて」
義蔵「う、嘘だ。真名ちゃんも僕のことをデブでブサイクだと思っているから、付き合いたくないんだろう」
真名「そ、それは違うわ。本当に、今は付き合うとか考えられないの。あと、私を親しげに名前で呼ぶのはやめてほしいんだけど」
義蔵「僕の思いは本物なんだ!入学式のときに一目惚れしたんだ!ま、真名ちゃん、す、好きだよ」
真名「い、いやっ!離して!だ、誰か助けて!」
真名は振り返り、屋上の入口の扉から校舎内に逃げ込もうとする。
義蔵「ま、待て!」

真名「だ、誰か!」
義蔵「真名ちゃん!捕まえた!」
義蔵は真名の両腕をつかんで、自分のほうを振り向かせた。
真名「やあぁっ!」
真名は反射的に、義蔵の股間を膝で蹴り上げていた。
カキーーーン
義蔵「ぐぅっ!?」
男の大事なモノを蹴られ、思わず真名の両腕を離し、かがみ込んでしまう義蔵。
逃げるなら今のうち、とばかりに真名は再び階段のほうへ振り返り、階段を駆け下りようとする。
義蔵「ま、待て、逃がさないぞ・・・」
しかし運悪く、義蔵に再び腕をつかまれてしまう。

真名「は、離して!離してったら・・・きゃあっ!?」
義蔵「う、うわっ!?」
ドドドドドドドドドドド。
真名と義蔵はお互いに抱きつくような格好で屋上からの階段を転げ落ちた。










「う、うーん」
真名は目が覚めた。
5分か10分か、けっこう長いこと気を失っていた気がする。
「気が付いたかい?」
誰か女子の声が真名の耳に届いた。声は、階段の上のほうからする。
真名は立ち上がり、階段の上を見上げると、息を呑んだ。
「・・・・・・・ッッ!!」
真名は驚愕した。そこには、なんと「自分」が立っていた。

f0130334_113499.jpg
目の前の「真名」は、左手を階段の手すりに添え、右手で、自分の頬にかかっていた長い黒髪をバサッと書き上げた。
左足はまっすぐ伸ばし、右足は膝を少し曲げて、左足があるより1つ上の段に足を置いている。

真名「驚くのはまだ早いよ。自分の身体を見てごらん」

真名は自分の身体を見た。
太い腕。肌は浅黒く、手の指に至るまで太い。お腹はでっぷりと突き出ていて、胸も腰もお尻もほぼ均等の太さだ。全体的にたぷたぷと肉がたるんでいる。白いシャツは水に濡れているかのように肌にべったり張り付いていて、下の肌がはっきり見える。自身が出した汗によって肌に張り付いているのだ。下はズボンを穿いている。ゆったりしたズボンなのでよく分からないが、太ももも相当太いだろう。頭を触ってみると、ほとんど髪はない。頭の上のほうにふさふさと固まって生えているだけだ。そして、あたりに酸っぱいような、鼻に突き刺さる臭いがする。それが、自分の身体から出ている汗によるものだと認識するのに、さほど時間はかからなかった。

義蔵「い、いやあああああああああああ!」
義蔵は頭をかかえ、絶叫した。
自分の身体が、入間義蔵のものになっていたからである。

真名「今日は最高の日だよ。まさかこんなことになるなんて。あ、真名ちゃん、もう僕と付き合ってくれなくていいよ。これからは、僕が神城真名なんだから

義蔵「か、返して!私の身体返して!」
義蔵は取り乱しながら、階段をかけあがった。
真名は迫り来る義蔵を見て、屋上へ出た。


真名は屋上を走って逃げていたが、義蔵に追いつかれ、両腕を掴まれてしまう。
義蔵「返してよ、返しなさいよ、私の身体・・・」
義蔵は涙と鼻水でぐちゃぐちゃの顔になっていた。
両腕を掴まれ、義蔵のほうへ向かされた真名は、一瞬、邪悪な表情を浮かべ、
カキーーン!
義蔵の股間を、膝で勢いよく蹴り上げた。
義蔵「ぐぅあっ!!」
股間に痛烈な一撃をくらった義蔵はたまらず真名の手を離し、股間を押さえ、その場に情けなくしゃがみ込んでしまう。
義蔵「うううう・・・・」
義蔵はよく分からないうめき声をあげている。
真名「ふふふふ、どうだい真名ちゃん、さっきの仕返しだよ。おちんちんを蹴られたら痛いだろう?ふふふ、今日から君はそれでおしっこを出したりオナニーしたりするようになるんだから、大事にしたほうがいいよ」




後書き。

イラストの女の子の、「勝ち誇っているような、勝ち気な表情」が、「入れ替わった後、入れ替わったことを喜んでいる表情」っぽく見えたので、入れ替わりのイラストとして使いたいがために書いた話。
イラストは例によって無断転載です。

イラストの女の子は「この青空に約束をー」というPCゲームの「朝倉 奈緒子(あさくら なおこ)」という女の子。
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by irekawari | 2007-05-26 11:04 | 男と女の入れ替わり小説

狙われた少女 その3

霞が母のぬくもりを肌で感じ、思わずこのまま身も心も委ねてしまいそうになっていたとき。
菜々子「霞ちゃーーーーーん!大丈夫ーーーーーーっ!?」
霞「な、菜々子さん!来てくれたんだ・・・」
四葉「ちっ、もう追いついて来たか。しかし、見たところたった一人。我の相手ではない」
霞「えっ、や、やめて!菜々子ちゃんに手を出さないで!」
片腕で霞を抱いたままもう片方の手を前方に差し出すと、その手のひらが軽く光を放ち、バチバチと小さな火花を散らす。
霞はさっき虎美が食らったあの光球のことが脳裏に浮かんだ。
あの光球を、今度は菜々子に放とうとしている。
四葉「安心しろ、ちゃんと手加減はする。仮に当たっても、数分の間動けなくなる程度だ」
霞「菜々子さん避けてぇ!」
四葉の手のひらから光球が放たれる。
菜々子「わ、な、なにこれ」
光球は菜々子の足元に向かって飛んできた。足にダメージを与えて、追いかけてこられないようにするつもりだ。
菜々子が慌てて進路変更しよとすると。
ツルッ
菜々子「きゃあっ!」
どすーーーん!
菜々子はなにかに足を滑らせ、派手に転んでしまった。
菜々子が転んだために光球は狙いが外れ、菜々子の遙か後方で小さな爆発を起こした。
菜々子「もう~誰よこんなところにバナナの皮を捨てたのは!」

四葉「ふむ、人間にしてはかなりの幸運の持ち主だな、あの娘は。では、次はもう少し大きいのをぶつけてみるか」
四葉の手のひらに、先程の倍はあろうかという光球が現れる。
さっき、これより小さいぐらいの光球をまともに食らった虎美は、しばらく動けなかったほどだ。
この大きさをまともに食らえば、ひょっとしたら・・・
そう考えた瞬間、霞の体はすぐに動いていた。
霞「や、やめてぇ!」
霞は四葉につかみかかり、光球を放とうとしていた腕を押さえた。
四葉「むっ!?」
霞が手を押さえた瞬間、光球が放たれた。わずかに狙いがずれた光球は菜々子の顔面のすぐ横を過ぎ去り、近くの木の幹に当たって爆ぜた。
菜々子「ひえええ」
さすがに今のは、脳天気な菜々子でも少し肝を冷やしたようだ。

霞「やめて!貴女が私のお母さんだというなら、私の友達を傷つけるのはやめて!」
四葉「霞、お前に人間の友など必要ない。おとなしく我と一緒に魔界に来ることが、霞にとっての最良の選択なのだ」

四葉「安心しろ、死にはしない」
そう言いつつ、四葉は手のひらに次の光球を発生させる。
気のせいか、その光球はさっきの第2撃より大きい。
今までの威力を考えれば、この大きさの光球をくらえば、たしかに死にはしないだろうが、しばらくの間、病院の世話になることは確実だ。
ドォンッ
四葉の手のひらから光球の第3撃が放たれる。まるでブーメランのように大きく弧を描きながら菜々子に向かって飛んでいく。
今度は足元にバナナの皮はない。菜々子に避ける気配もない。光球はかなりの速さなので、一般人より鈍い感覚しか持っていない菜々子には、自分の身に危険が及んでいることすら気付いていない。

霞「だ・・・だめーーーーーー!」

ドゴォーーーーン!
先程より大きな爆発音が響く。
菜々子がいた場所には土煙が巻き起こっている。
霞「な、菜々子さん・・・まさか・・・」
霞は思わず泣き出しそうになった。
しかし、土煙が一陣の風によって吹き払われたとき。
菜々子が、きょとんとした顔で立っているのが見えた。
霞「菜々子さん!無事だったんだ・・・!」

菜々子「な、なにこのあたしを包んでいるピンクいの!な、なんかバリヤーみたい」
菜々子が叫ぶと、菜々子を覆っていた、薄いピンクの膜が霧が晴れるように消え去る。
菜々子「消えちゃった・・・なんだったんだろ」

四葉「今のは・・・あの人間の娘の能力ではない。ということは・・・今のは霞か。霞の、友を思う心が魔界人としての能力を目覚めさせたのだろう」
霞「「今のが・・・私の力!?そんな・・・」


詩乃「霞さーーーーん!大丈夫ですの!?」
虎美「菜々子も・・・大丈夫か」
菜々子「詩乃!虎美ちゃん!来てくれたんだ!」
詩乃「ほーーーーほっほっほ、このわたくしにかかれば、あんなカード使い、ものの数ではないですわ!」

椿「人間ふぜいが調子に乗るんじゃないわよ!勝負はまだこれからよ!」
詩乃・虎美が追いかけてきたのとはまた別の方角から、服が少しボロボロになった椿が現れた。

四葉「ほう、あの椿ですら完全には敵わないとは・・・人間にしてはやりますね。椿、少し下がっていなさい。ここは私が相手をします」
椿「魔王長さまがお一人でですか!?わ、私も手伝います!」
四葉「椿、・・・下がっていなさい」
椿「は、ははっ!」
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by irekawari | 2007-05-25 23:42 | 女同士入れ替わり

狙われた少女 続き

椿「よ、四葉・・・あなた、やればできるじゃない」
椿がすっかり感心した表情で、霞を拘束している四葉のもとへ歩み寄っていく。

四葉「椿。我はこの人間の娘を連れて先に魔界へ帰る。お前は引き続きそれまでの間、そこに居る人間どもを足止めしておけ」
椿「なっ!?ちょっと四葉、隊長の私にむかってなにそんな偉そうな・・・」
自分の部下であるはずの四葉に「命令」されて椿は怒り爆発になりそうになる・・・が。
四葉が自分を見据える視線をみていると、ビクッと、椿の背筋に悪寒が走った。
椿「な、なに、あの刺すような視線・・・そしてこの溢れ出てくるようなオーラは・・・これってまさか・・・」
今の四葉の目には、椿が昨日謁見の間で見た、ある人物と同じ暗い光が宿っている。

椿「ま、まさか、魔王長さま!?な、なぜこのようなところに・・・」
四葉「やっと分かったか。説明不足だったことは詫びよう。でも、こうでもしないとその人間たちの油断を誘えなかったのだ。さっきも言ったとおり、我がこの者を連れて行く。椿はあの者たちを足止めしていろ」
椿「で、ですが、申し訳ございませんが私にはもう武器が・・・」
四葉「これを使うがよい」
四葉は胸元から小さめの箱を1つ取り出し、椿に向かって放り投げた。
椿はそれをキャッチし、さっそく開けてみた。
椿「こ、これはカード使い憧れの、魔界の最高級品、天任堂製のカード!?」
どうやら椿がさっきまで使っていたカードよりさらに高級なものらしい。
四葉「椿は無駄打ちが多すぎる。1つ1つきちんと狙いを定めろ」
椿「ははっ!!魔王長さま、ありがとうございます!」
椿は体が折れるほど深く、四葉に向かってお辞儀した。

四葉「では行くぞ、娘。私についてこい」
霞「きゃ・・・み、みんな」
四葉はいつの間にか霞の手を体の後ろで紐で縛り上げていた。
そしてそのまま、霞を連れて立ち去ろうとしている。

菜々子「あっ!霞ちゃんがさらわれちゃうよ!」
詩乃「なんだかよく分かりませんが、あの四葉って子、いつものチャランポランしたのとは別人みたいですわ!まともにいっても、敵いそうにありませんわよ!」
菜々子「でも!誘拐されてるんだよ!追いかけないと!」
詩乃「分かっていますわよ!でも、虎美さんもさっきの攻撃で・・・」
虎美「わたしは大丈夫だ・・・みんな、早く霞を追いかけるんだ・・・」
虎美が、痛みをこらえながらなんとか立ち上がる。
シュン!
シュン!
シュン!
菜々子「わっ」
詩乃「きゃあっ」
虎美「うっ!?」
突然、菜々子たち3人の腕に鋭い痛みが走る。
見ると、痛みを感じるところの服が刃物で切ったように綺麗に切れている。服の切れ目には赤い線が走り、そこから赤い血がツツ・・・と垂れている。
椿「うふふふ・・・どこへ行くのかしら?貴女たちの相手はこの私よ」
椿が両手の指の間にカードを差した状態で菜々子たちに迫る。
椿「魔王長さまからいただいた新しいカードの切れ味、貴女たちで試させてもらうわ!」




霞「はぁっ、はぁっ、わ、私をどこまで連れて行くの!?」
霞は四葉に引っ張られるように、四葉に腕をつかまれてずっと走らされていた。
ずっと走っていたため、あまり体力のない霞は早くも息があがっている。
四葉「ふむ・・・まずはこのあたりで休むか。」
人気のない空き地で立ち止まった四葉は、霞の腕を縛っていた紐を解いてやった。
霞「え?私を自由にしてくれるの?」
四葉「解放したりはせん。ただ、ここまで来ればもうお前は逃げられない。わざわざ腕を縛る必要がなくなっただけだ」
霞は四葉から少し離れ、四葉に気になることを質問してみた。
霞「あ、貴女は誰?見た目はいつもの四葉って人みたいだけど、今日は雰囲気が全然違う。それに、なんで私をさらうの?私みたいな、何の取り柄もないのを・・・」
四葉「ふっ、さすがにそれぐらいは分かるみたいだな。そうだ、私は四葉ではない。お前たち人間が住むこの世界とは別の次元にある魔界を統べる王・魔王長の理央だ。今はとある術を使って、四葉と我の身体を入れ替えている」
霞「か、身体を入れ替える・・・そんなことが・・・」
四葉「まあ、それはどうでもいい。重要なことでもない。お前が2番目に質問したことが、お前にとっても我にとっても重要なことだ」
霞「な、なんですか重要なことって・・・」
四葉「我は回りくどいのは嫌いだ。単刀直入に言うぞ。」
霞「は、はい・・・・・・・・・・・」

四葉「我はお前の母だ」

霞「えっっっ!!!」
四葉「そして霞、お前は魔界人である我と人間の男との間に生まれたハーフだ。我はずっとお前を探していた。そしてやっとみつけた。我と共に魔界で暮らそう」
霞「そ、そんな・・・あなたが私の・・・お、お母さん!?それに、私が・・・魔界人とのハーフだなんて・・・」
四葉「すぐには信じられないだろう。しかし、お前は今の両親が『本当の両親』ではないことぐらい知っていよう」
霞「それは・・・直接聞かされたわけじゃないですが、薄々分かっていました・・・でも、そんな・・・私のお母さんが人間じゃないなんて・・・」
四葉「心配するな。魔界は人間界より住みやすい。お前もすぐに魔界を気に入るだろう」
霞「い、いやあっ!私、行かない!あなたが私のお母さんだってまだ信じられないし、私には、大切な友達がいるの!」
四葉「まあ、すぐに全部を信じてもらえるとは思っていなかったが・・・少しだけ悲しいな。我は、十何年ぶりに霞に会えてとても嬉しいのだが、霞は、我と会えたことを喜んでくれないのだな・・・」
霞「そ、そんな・・・こと・・・急に言われても・・・」
突然、四葉が霞を抱きしめた。
四葉よりやや背が低い霞は、抱きしめられると、自分の顔がちょうど四葉の胸にうずもれる格好になる。
全身を包み込むこの感触。そして頬から、顔全体から伝わるこの暖かさ。
それは、霞自身はもうはっきり覚えていないが、幼い頃、霞が母に抱いてもらっていたときに感じた、母のぬくもりであった。






椿「ほーーーーーーほっほっほ!ほらほら、どうしたの人間!さっきまでの勢いはどこへ行ったの!?」
虎美「くっ・・・まずい、攻撃が激しくなってきている」
詩乃「いやーーーーーーっっ、わたくしの玉のお肌に傷がぁーーーーーっ」
菜々子「よっ、ほっ、はっ」
詩乃「って菜々子さん、なんで貴女だけほとんど無傷ですの!?」
見ると、菜々子は腕に1回攻撃を受けたぐらいで、あとは全然ダメージを受けていない。
菜々子「うーん、あたしって生まれつきラッキーだからかな?」
詩乃「そ、そうでしたわ、菜々子さんが宇宙一といっていいぐらい幸運の持ち主ということを忘れていましたわ」
椿「ちょっ・・・!あんた、大人しく私のカード攻撃を食らいなさい!」
菜々子「べーだ。あたしには効かないもんねー」
詩乃「なんか理不尽ですけど・・・これはチャンスですわ」
虎美「そうだな、こいつは私と詩乃でなんとかする!菜々子は、霞をおいかけてくれ!今なら、まだ間に合うはずだ!」
菜々子「うん分かった!虎美ちゃん、詩乃、あとよろしくね!」
椿「あ!こら!そこの小娘、待ちなさい!」
霞たちを追ってこの場から去ろうとする菜々子を、後ろから椿のカード攻撃が襲いかかるが、全て、紙一重のところでかわされ、当たらない。

詩乃「まったく、このわたくしが菜々子のバックアップだなんて・・・」
虎美「まあいいじゃないか、今はとにかく霞のことが第一だ」
詩乃「そうですわね、虎美さん。わたくしも、ただキャーキャー言うだけのお嬢様でないことを、この者に教えてあげなくてはね」
椿「ふん・・・なあに、そっちの縦ロールの子も、攻撃に参加するってワケ?でも、魔王長さまからいただいたこのカードがあれば、私は無敵よ!お前たちを片づけて、さっきの小娘も始末してあげるわ!」








そのころ、魔界では。
魔王長の理央に、半ば無理矢理お互いの身体を入れ替えられた四葉は、理央の代わりに理央として、魔王長の仕事をこなしていた。
今日は基本的に中の仕事ばかりで、他の次元の使者と会うというような、来客の相手をするようなことがないため、今のところは周りに入れ替わりがバレないで済んでいる。
だいたい仕事にも一区切りがつき、今は休憩時間である。
理央の身体の四葉は理央の私室に戻ってきて、椅子に腰かけ、机に突っ伏して休息をとっている。
理央「はぁ~、疲れた~。魔王長さま、いつもこんなにたくさんお仕事しているのか~大変だな~」
理央は上半身を起こして肩をトントンと叩いた。デスクワークのしすぎで肩が凝っている。
理央「今日は『たつや』の新作スィーツ発売の日だったのにな~。人間界に行ったときはいつも『たつや』に寄ってスィーツ買って帰るのが楽しみだったのに、今日は魔王長様と入れ替わっちゃってるから『たつや』行けないよ~、あーあー、食べたかったなー」

理央「うーん、でも、会う人会う人、みんなから『魔王長さま』って呼ばれるのは気持ちいいなー。みんな私に向かってペコペコするもんねー。」
そう言って、椅子から立ち上がった理央は、今度は壁に掛けてある、全身が映るほどの大きさの鏡の前に立った。
理央「顔はこーんなに美人だし。胸だっておっきいし。髪はサラサラだし、ドレスは素敵だし。言うことなしだよねー。もうずーーーっと、魔王長のままでいたいなー・・・、なーんて・・・」

理央「ん?待てよ?」

理央「ずーーっと、魔王長のままか・・・私が・・・魔王長・・・それもいいよね・・・うふ、うふふふふ・・・・・・」
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by irekawari | 2007-05-24 23:50 | 女同士入れ替わり

狙われた少女

虎美「終わりだ」
ガスッ!
虎美の回し蹴りが四葉に決まる。
かなり手加減しているので、大したダメージではないのだが。
四葉「きゃああーーーっ!椿隊長~やられちゃいました~」
椿「四葉!あんたもうやられたの!私みたいにすこしは持ちこたえなさい!」
椿が懐から何十枚ものカードを取り出し、虎美に投げつける。
ただのカードではない。人間の皮膚ぐらい簡単に切り裂けるぐらいの鋭い切れ味を持ったカードだ。
しかし、それらを持ち前の素早い足運びで難なく避ける虎美。
虎美「攻撃がワンパターンだ」
椿「なにっ!しまっ・・・」
ドスッ
虎美の重い一撃が決まる。

四葉「うえ~ん、隊長だって一撃だったじゃないですか~」
椿「うるさい!お前がもう少しもちこたえていれば、今回こそあの娘を拉致できたんだ!とりあえず撤退するぞ!」
四葉と椿はワーワーわめきながら逃げていった。

菜々子「やったーーー!今回もあたし達の大勝利ーーー!!」
詩乃「菜々子さん、貴女は何もしていませんでしたけどね。今回もほとんど虎美さんが一人で退治したようなものですわ」
虎美「わたしは・・・大したことはしていない・・・」
霞「ううん、虎美さんも詩乃さんも、菜々子ちゃんも全力で私を守ってくれていたよ。本当にありがとう」
菜々子「うんうん、霞ちゃんが無事でホントよかったよ!」
詩乃「霞さん・・・あんまり菜々子さんを褒めたら調子に乗りますわよ?」
菜々子「えー、詩乃ひどーい!ちゃんと虎美ちゃんを応援してたじゃん!それにあたしだってあの四葉って人に跳び蹴り決めたもん!」
詩乃「避けられたじゃないですか!なに勝手に当たったことにしてるんですの!」
菜々子「ちゃんと狙ったのにな~。やっぱり全員で名乗りポーズ決めていないから気分が盛り上がらないんだよ」
詩乃「なんですの、またお得意のヒーローものですの・・・頭痛いですわ」
虎美「しかし・・・こうまでして連中が霞を狙う理由はなんなんだろうな」
詩乃「そうですわね。容姿端麗、文武両道で家柄も良いわたくしが、わたくしの美貌や身代金目当てで狙われるのならまだ分かるのですが・・・」
菜々子「詩乃のスッピン見たら誰も誘拐する気なんて起こらないよ。それより霞ちゃん、誘拐される心当たりある?」
詩乃「ちょっと菜々子さん!貴女なにさりげなく暴言吐いてるんですか!!」
霞「え・・・私は・・・何の取り柄もないし・・・心当たりなんて・・・」
菜々子「やっぱり謎のままか~、ま、大丈夫だよ!次にあいつらが襲ってきても、またあたし達が霞ちゃんを守るから!」
詩乃「相変わらずノーテンキな思考の持ち主ですわね・・・」




狙われた少女




ここは人間が住む人間界とは別の次元にある、魔界。
魔界を統べる王・魔王長の理央(りお)の謁見の間で、隊長の椿と一般戦闘員の四葉が今回の任務の報告をしている。
椿「魔王長さま、申し訳ございません、今回もあの霞という人間の娘の拉致に失敗してしまいました・・・」
四葉「も、もうしわけございません~」
理央「人間ひとりさらってくるのに、いつまで手間取っている」
椿と四葉が居るところより数段高いところに玉座があり、その玉座に一人の女性が座っている。
髪は薄い茶色で背中までの長さがあり、こめかみから耳の前を通って前に2本垂らし、背中に流している髪も2本に分かれており、それぞれの先で布で縛っている。
胸元の開いた黒いドレスを着ており、袖は肩のところで広がっている、パフスリーブになっている。
ドレスの上からさらに黒いマントを羽織っていて、マントには大きく三角形に広がっている襟がついている。
耳が三角に尖っていて、頭から2本の角が生えているのは椿や四葉と同じだが、その角が巻き貝のごとく1回転分ねじれた後に、天に向かって伸びているのが、特徴的だ。
理央は部下の失敗に対して特に怒っている風でもなく、ただ、冷ややかな視線を二人に向けている。
椿「はっ、人間にもかなり手練れた者がおりまして・・・つ、次こそは必ず!」
理央「ふん。もうよい、下がれ」
椿「は、ははぁっ!」
四葉「し、しつれいします~」
理央「四葉。」
四葉「は、はいぃっ!?な、なんでございましょう、魔王長さま!?」
理央「お前に話がある。後で我の部屋に来るがよい」
四葉「えええっっ!?わ、私ごときが魔王長さまの部屋にですか!?」
椿「いい機会だ。魔王長さま直々に、たっぷりお仕置きされてこい」
四葉「ええええーーー!た、隊長~、そ、そんな~」
理央「夜10時に来い。遅れるなよ」
それだけ言って、魔王長は謁見の間から出て行った。
四葉「うええーん、痛いのはイヤです~」



そして夜10時。
コンコンと、魔王長の私室のドアをノックする音がする。
四葉「し、失礼します。魔王長さま、四葉です~」
理央「時間どおりだな。よし、入れ」

四葉「え、えーと、罰は、掃除とか洗濯ならいくらでもしますから、痛いのだけはご勘弁していただけないでしょうか~」
理央「なんだ、痛いのとは」
四葉「え?わたしがいつも仕事でドジしてるから、魔王長さまお怒りになって、わたしにいろいろお仕置きとかされるために呼ばれたのではないのでしょうか~」
理央「違う。そんなことなら椿を通してやらせる。私がお前をここへ呼んだのは、お前にあるものを貸してもらうためだ」
四葉「か、貸す?わたし、お給料少ないからお金あんまり持ってないんですが・・・」
理央「金ではない。なに、すぐ分かる・・・では、いくぞ」
四葉「え・・・わ・・・きゃあっ!!??」








次の日。
ここは人間界、菜々子・詩乃・虎美・霞が通っている、私立青雲高校。
菜々子がいるクラスに、転校生がやってきた。
朝のホームルームで、その転校生が自己紹介をしている。
あかね「ウチは高槻あかね(たかつき あかね)いいます!趣味は発明!なにか困っていることがあったらなんでも言うたってや!ウチの発明で万事解決してみせるで!」
菜々子「詩乃、詩乃!ねえねえ、転校生だよ転校生!新しい仲間の予感だよ!あの子って、絶対5人目の仲間だと思わない!?」
詩乃「なんですの、5人目って・・・戦隊ヒーローの見過ぎですわ」



そして放課後。
菜々子「あれ~、ねえねえ詩乃、今日転校してきたあのあかねって子、知らない?」
詩乃「知らないですわよ。知っていたとして、どうなさるおつもりでしたの?」
菜々子「もちろん、あたし達の仲間になってもらうの!これで5人揃うよ!5人揃ったら、みんなの色決めなきゃね!あ、赤はあたしの色だから、詩乃は別の色にしてね!」
詩乃「色なんて決めません!ヒーローものから離れてなさい!」


菜々子「でね、でね、今日あたしのクラスにあかねって名前の転校生が来てね、発明好きらしくて、これはもう絶対仲間になってもらわなきゃ、って思ったわけよ!」
霞「菜々子ちゃん、そのあかねって人とまだお話もしていないのよね?ちょっと急すぎなんじゃ・・・」
虎美「そうだな。菜々子がヒーローに憧れるのはいいが、いきなり仲間、ではその人も訳が分からないだけだ」
詩乃「まったく、菜々子さんは考えなしなんですから・・・」
今日も今日とて、4人は一緒になって下校していた。

虎美「ん・・・危ない、みんな伏せろ!」
虎美が瞬間的に霞をかばう。
カカカッ
虎美の足下に、いくつものカードが刺さっている。
椿「ほっほっほ、今日こそその娘をいただきますわ」
近くの塀の上に、見慣れた女性二人組が立っている。
頭に角が生えていて、一目で人間でないと分かる。
四葉「きょ、今日こそリベンジなのです~とあっ!」
四葉が塀から飛び降り、虎美に向かってまずは先制の一撃を加えようとする。
四葉「きゃうん!」
虎美「まだまだだ」
虎美の正拳突きが決まり、四葉は速攻で膝をつき、倒れ込んでしまう。
椿「四葉!またあんたは速攻でやられて!!ったく、またあたしが踏ん張らなきゃいけないじゃない!」
椿はまた懐からカードを取り出し、虎美や菜々子、詩乃たちに狙いを定める。
菜々子「よーし今日こそ名乗りポーズを決めるんだ!」
詩乃「菜々子さん、貴女この非常時になにしようとしてるの!」
戦闘能力を持っていない菜々子と詩乃はカミソリのような切れ味のカード攻撃を避けるのに精一杯だ。
虎美「霞、安全なところに離れているんだ!」
霞「は、はい」
虎美は霞に離れているよう指示し、自分は遠くへ移動し、できるだけ椿をひきつけようとした。
椿「ふっ、私もそう何度もやられなくてよ!」
椿が、いつもより倍以上のカードを取り出し、虎美に投げつける。
虎美「うおおっ!」

虎美と椿の一騎打ちが始まって数分。
椿はカードを打ち尽くしていた。
虎美「もう武器はなくなったようだな」
椿「ちっ、まだまだこれからよ!」
虎美が椿を仕留めようと、ダッシュで近づいていたとき。
ドォン!
突如、光の球が虎美を襲った。
虎美「ぐっ!?」
不意の攻撃をくらい、地面に倒れる虎美。
菜々子「と、虎美ちゃん!?」
詩乃「な、なにが起こったんですの?」

四葉「ふふふ、椿、よくその者を引き留めていてくれました」
霞「み、みんな・・・ごめんなさい」

菜々子「霞ちゃん!?」
詩乃「霞さん!?」
虎美「か・・・霞・・・」
椿「え!?四葉・・・あなた・・・」

見ると、四葉が霞の後ろに立ち、右腕で霞の首を押さえて、左手で、霞の腕を後ろで捻り上げている。
腕を捻られていることへの痛みか、霞の表情が少しだけ歪んでいる。
四葉「下等な人間たち。この娘の命が惜しければ、そこから一歩も動かないことね」
いつもの頼りない口調とは違い、今の四葉の言葉には、やけに冷酷な響きがする。
虎美「くっ・・・」
菜々子「え!?なに!?だるまさんが転んだやるの!?」
詩乃「あんたは黙ってなさい!」

椿「よ、四葉・・・あなた、やればできるじゃない」
椿がすっかり感心した表情で、霞を拘束している四葉のもとへ歩み寄っていく。







続く。





後書き。

劇中、特に明記していなかったのですが、理央は女性です。素っ気ないしゃべり方なので、男だと思った方がいるかも(汗)。というわけで、理央の外見に関する描写をちょっと付け足してみました。


名前の由来は

『菜々子』
『詩乃』
『あかね』

が、「未影」先生の漫画「イチロー!」より
「小西ななこ」
「紫詩乃」
「中澤茜」から。


『虎美』

が、格闘ゲーム「あすか120%」より
「北条虎美」から。


『霞』

が、格闘ゲーム「DEAD OR ALIVE」シリーズの「かすみ」・・・ではなく、コバルト文庫の「立原とうや」先生の「双貌の救世主 ダークサイド・ハンター」より、
「霞美(かすみ)」から。
邪悪な存在に身体を乗っ取られてしまう女性の名前なのです。気弱で大人しい性格で、ほおっておくとまさに存在そのものが霞んでしまいそうなぐらい儚げな女性で、名前と性格がぴったり一致しているので印象に残っていました。


『理央』

が、「まんがタイムきららキャラット」の2007年6月号で連載を終了した「蒼馬みずき」先生の「ご近所魔王。」より
「莉央(りお)」から。
「大魔王長」という役職に就いていたり、頭に角が生えていたりと、性格やしゃべり方以外の見た目は元ネタをほとんどそのまま使っています。


「椿」と「四葉」は元ネタ無し。
上司と部下という、関わり合いの強い二人なので、一応「植物関係」ということで統一感を持たせてみたり。
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by irekawari | 2007-05-23 23:53 | 女同士入れ替わり