白雪姫「女同士入れ替わりと、女同士の憑依が好きです。


by irekawari
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魔王と魔王の妻の入れ替わり

魔王と魔王の妻の入れ替わり



魔王グラド
魔王妃セリーヌ

魔王子シリウス

セリーヌの元恋人・キルシュ








魔界の王・魔王グラドは人間界に侵攻。
グラドは手始めにサドルート国を乗っ取り、ここを人間界侵攻の本拠地とした。
さらにグラドは人間界侵攻とはまた別に、単身世界中を回り、自らの妃とするべく人間の若い娘を数人攫い、自分の国へ連れ帰った。グラドは集めた数人の女性の中から最終的に一人を選び、その娘と結婚した。それは相手の娘の意思など一切受け入れない、魔王の力づくによる一方的な行動だった。
娘の名はセリーヌ。彼女は普通の人間で、とりたてて何か特別な能力を持っているわけではないが、生まれつき髪が真っ白で、さらに瞳が赤かった。
セリーヌは美しくさらに優しい心の持ち主だったが、その普通の人ならざる外見のため、人々から迫害を受けてきた。
そのため、セリーヌが魔王に攫われたときも、彼女を心配する者はほとんどいなかった。逆に、以前から魔界の住民と通じていたとか、あの外見は元々魔界の民であったからとか、迫害を受けた腹いせに自ら進んで魔王の妻になった等、事実無根なことを人々は噂し合ってさえいた。

魔王グラドが人間界に侵攻して10数年。
魔王軍の力は強大だったが、人間たちの必死の抵抗もあり、いまだに魔王の支配する土地は全世界の3分の1ほどだった。
魔王グラドはセリーヌを攫ってすぐに彼女の純潔を奪い、自分の子供を孕ませた。
グラドとセリーヌの間には男の子が生まれ、シリウスと名づけられた。

しかし魔王にとってセリーヌに子供を生ませたのはほとんど余興みたいなものであり、グラドはシリウスに対して親らしいことは全くしなかった。寿命の長い魔王は現在でも力は全盛期のそれであり、自らが衰えたから子に後を継がせるとか、そういう意味も全くなかった。
魔王はシリウスのことをほとんど「物」みたいにしか扱っていなかった。

しかし母親であるセリーヌは人間と魔族のハーフであるシリウスに愛情を持って接し、幼いころはほとんどつきっきりで育て上げた。
粗暴を絵に描いたような魔王ではなく、セリーヌの母の愛によって育てられたシリウスは、まっすぐな性格に育ち、「人の痛み」というものも分かるほどの思慮分別のある者へと成長していた。




そして現在、シリウスは14歳。
セリーヌが魔王の妻となった日から14年が経った。15だったセリーヌも29歳となり、すっかり大人の女性になっていた。

セリーヌは魔王グラドとは普段は別居していて、呼ばれれば魔王の元へ赴いていく、ということをしている。
そしてここはセリーヌが普段住居として使っている建物である。
そこへ、セリーヌの息子・人間と魔族のハーフであるシリウスが訪ねてきていた。

シリウス「母上、またあいつに暴力を振るわれたのですか!?」
セリーヌ「シリウス、自分の父をあいつなどと言ってはいけませんよ」
シリウス「あいつはあいつですよ!あんな奴、父親でもなんでもない!母上だって、あの男には不満を持っているでしょう!?何度も言っていますが、私と一緒にここを抜け出しましょう!」

シリウスは父である魔王グラドが嫌いだった。むしろ憎んでさえいた。当然だ、生まれたときから親として愛情を注がれたことなど皆無だったからだ。シリウスにとってグラドは、幼いころから数回しか会っていない上に、たまに会っても特に理由もなく殴られた、そんな記憶しかない。そのような者に、いい感情を持ちえるはずがない。

セリーヌ「シリウス、私も何度も言っていますが、私はあの人の元を離れるつもりはありませんよ。あなたももう親離れをする年頃でしょう、あなたが行きたいところがあるのなら、私は止めはしません。あの人は・・・元からあんな人だから、あの人もあなたを止めたりはしないでしょう。私のことは気にせず、自由な世界に旅立ちなさい」
シリウス「・・・理解できません!あんなケダモノのような男の何がいいのです?・・・今日こそははっきり言わせていただきますが、あの男は母上を性奴隷としてしか思っていないのですよ!?」
セリーヌ「・・・・・・」
シリウス「それだけでも許せないですが、その上日常的に暴力を振るう!母上の体だって、あちこち痣だらけじゃないですか!その上、子の私には一切の愛情を示さない!まあ、私はまだ幸せです。母上の愛情をもらってここまで育つことができましたから、母上には感謝しきれないほど感謝しています。母上の愛情をもらわなければ、私もあの男のような心のない者になっていたかもしれません。でも、母上はどうです!?魔王の妻とは名ばかりで、四六時中監視のついた軟禁生活。たまにあの男に呼び出されれば、欲望のはけ口にされる!母上には、全く幸せがないじゃないですか!」
シリウスは日ごろ感じていた不満をここぞとばかりに一気に爆発させた。
しかしセリーヌは、息子の抗議をそれほど気にした風でもなく、静かにうつむき気味に顔を左右にふり、やんわりと否定の態度を示した。
セリーヌ「そうね、たしかにあの人は粗野で粗暴で、人をためらいもなく殺します。・・・あなたにはずいぶん辛い思いをさせましたね。父親の愛情を、あなたに与えてあげることができなかった・・・」
シリウス「いりませんよ、あんな奴の愛情なんか!あんな奴、いつか私が滅ぼしてやります!」
セリーヌ「シリウス、あの人は、同じ人間であるはずの周りの人から迫害されてきた私を受け入れてくれて、さらに私を必要としてくれたのですよ。たとえそれが、ただの欲望のはけ口でしかないとしても。人間の世界で、普通の人間たちと一緒に暮らしていたときは、もっと辛かった。あの人は私に、まともな生活を与えてくれた」
シリウス「母上!」
セリーヌ「シリウス、誤解しないでね。私は別に、いい暮らしができるようになったから、ここを離れないわけじゃないのよ。私はあの人の、心の支えになってあげたいの」
シリウス「あんな奴の!どこに心があるっていうんです!まともな心のある奴が、自分の妻を陵辱したり暴力振るったりなんかしないでしょう!」
セリーヌ「・・・あの人はね、寂しいのよ」
シリウス「・・・寂しい?あんな奴に、そんな普通の人間らしい心があるわけがない!」
セリーヌ「あの人は絶対的な力を持つがゆえに生まれながらにして孤独だった・・・私もずっとひとりだったから、あの人の気持ちが・・・なんとなくだけど分かるのよ。ああ、この人は、寂しいんだなって。周りとの接し方を知らないから、力に訴えるしかできないけど・・・。私はあの人の心の隙間を埋めてあげたい。支えになってあげたい。あの人と一緒になって十数年、まだそれはできていないけど・・・私が生きている間は、あの人の傍に居てあげたいの。・・・私のことは大丈夫よ、たまに辛いときもあるけど、長いこと一緒にいるうちに、もう慣れちゃったから。だから、私のことは気にせず、あなたはあなたの進みたい道を行きなさい」

シリウス「・・・本当にそれが母上の本心ですか?」
セリーヌ「そうですよ、嘘偽りのない、今の私の気持ちです」
シリウス「・・・なら、キルシュという人間の男のことは?」
セリーヌ「!」
今までシリウスのどんな抗議にも動じなかったセリーヌが、その名前を聞いて、ほんの少しだが、初めて動揺した素振りを見せた。
セリーヌ「・・・どこでその名前を?シリウスには話したことはなかったはずですが」
シリウス「私は何度も人間の国へ行っていますからね。母上の生まれた里にも行ったことがあります。そこで聞きました。母上はあいつに攫われる前、キルシュという人間の男とは将来を誓い合う仲だった。そのキルシュという男がどんな人物なのかは詳しく分からなかったけど・・・人間だけど母上の外見を気にしたりしない、すばらしい男だったんでしょう。母上は、そのキルシュという男のことが忘れられないのでは?あの魔王に無理矢理従わされているから、そのキルシュという男のことも無理矢理忘れ去ろうとしているだけなんじゃないですか?」
セリーヌ「・・・キルシュは・・・死んだって聞いたわ。人間が組織した魔王征伐軍の中に居たらしいけど・・・戦の最中に命を落としたって・・・」
シリウス「風の噂でしょう!ひょっとしたら生きているかもしれない!遺体を見たわけじゃないんなら、まだ生きているかもしれないんだ!そのキルシュって人が生きていたら・・・その人の元へ帰りたいでしょう?」
セリーヌ「・・・シリウス。もう時間が経ちすぎているのよ。たとえキルシュが生きていたとしても・・・キルシュとのことはもう過去。今の私は魔王グラドの妻。そして今の私は、グラドの傍に居てあげたい」
シリウス「どうあってもお考えは変わらないのですか・・・」
セリーヌはただ静かにうなずき、肯定した。
シリウス「分かりました。でも私もまだあきらめませんから、また来ますね。それと、そう遠くない日にあの男を討ち取ります。私も諸国を旅して、あの男に対抗できるほどの力を身につけてきているつもりですから。母上の夫を殺すことになりますが・・・そのときは止めないでくださいね」
シリウスは母に向かって一礼すると、踵を返してセリーヌの住居から出て行った。
後に残されたセリーヌは沈んだ表情で、はぁと一息、重いため息をついた。
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by irekawari | 2008-02-02 23:47 | 男と女の入れ替わり小説