白雪姫「女同士入れ替わりと、女同士の憑依が好きです。


by irekawari
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『THE IDOL CH@NGER』 ベテラン歌手とネットアイドルの入れ替わり(後編・完)

『THE IDOL CH@NGER』 ベテラン歌手とネットアイドルの入れ替わり(前編)

前編はこちら。





早乙女ゆりあ 20歳
中野明菜 45歳




ゆりあはまず、今着ている服一式を、下着を残して全部脱いだ。
下着姿になったゆりあは更衣室にある、全身の3分の2ほどが映る鏡の中の自分を見て、思わず溜息をついた。
ゆりあ「か、可愛い・・・」
服を着ていなくても、下着だけの姿でも十分すぎるほどゆりあは可愛かった。
ゆりあは身長がやや低めで小柄なのだが、出るところは出て、引っ込むところは引っ込んでいるので、プロポーションがとてもいい。特に胸は、この身長なら大きすぎるほどだ。ブラのサイズはC、あるいはDぐらいあるかもしれない。
さらに、その肌もぴちぴちで張りがあり、美しい。
明菜の身体は40を過ぎているだけあってかなり肌にも衰えが来ているが、まだ二十歳になったばかりのゆりあの肌はみずみずしく張りがあり、おそらく世の女性全てが憧れるような美肌だ。
ゆりあ「うわあ・・・すごい、肌がこんなにすべすべ。今、私ってとっても若いんだ・・・」
ゆりあは自分の身体を手で触って、その絹のような感触をしばし楽しんだ。
ゆりあ「あ、いけない、本番が迫ってるんだっけ。いそいで着替えなきゃ」
今の自分の身体の美しさにみとれていたゆりあははっと我に返り、慌てて近くのハンガーにかけてある、ステージ衣装を手にとった。


ゆりあはビスチェとスカートを組み合わせたような、肩が露出しているワンピースの背中のファスナーを下ろし、まず両脚をワンピースの中に入れ、ワンピースの上の部分を持って、ワンピース全体を上に引き上げた。
衣装を体型にフィットするまで上に持ち上げたが、衣装の胸のカップ部分とバストがまだ少しずれていたので、手で衣装をつかんで、微調整して、衣装の胸カップにバストがきっちり入れた。
そして、背中に腕を回して、衣装の後ろについているファスナーを手でつかみ、そのまま一番上までファスナーを上げていく。
ゆりあ「あ、いたた」
少し無理な体勢で背中のファスナーを上げたため、少し肩や肘を捻ってしまい、少し痛かった。
それでも、なんとか背中のファスナーを一番上まで上げることができた。
次にワンピースの上にケープを羽織り、スナップで止める。
そして化粧台の前の椅子に座り、近くにあったロングブーツを手に取った。ロングブーツは筒が膝下までの長さがあり、かかとはピンヒールになっていて、そのヒールもけっこう高い。
ゆりあはブーツのファスナーを持って一番下まで下げ、ブーツを開き、ブーツの中に自分の足を入れた。そしてまたファスナーを持って、ゆっくりとファスナーを一番上まであげてやる。左足のブーツを履き終えた後、同じようにして右足のブーツも履くことができた。
そして肘に少し届かないぐらいの長めの手袋をはめ、首にチョーカーをつけ、これで着替えが完了した。
ヒール付きのブーツは若い頃のアイドル時代はよく履いていたが、最近は全く履いていなかったので、履いた直後は少しフラフラしてしまったが、すぐに若い頃の勘を取り戻し、安定して立てるようになった。
ゆりあは鏡の前に立ち、自分の姿を見た。
ゆりあ「うわぁ・・・か、可愛い・・・」
衣装を着ない、下着姿だけでもゆりあは可愛いかったが、衣装を着るとその可愛さはさらに何倍にも高まった。
ゆりあ自身が可愛いことももちろんだし、今着ている衣装も、単に似合っているだけでなく、ゆりあの可愛さをさらに引き出す効果を持っているようだ。
ゆりあは衣装を着た自分の可愛さにまたみとれ、改めてまた溜息をついた。
ゆりあ「すごく可愛い・・・これが本当に私?」
ゆりあは鏡の中の自分の姿を見て心臓がドキドキしてきた。
女の自分でもここまで興奮するのだから、男が今のゆりあを見たら、もう大変なことになってしまうだろう。

今着ている衣装は可愛いだけでなく、着心地もよかった。
ワンピースのスカートの裾、ケープの襟元と裾、手袋の手を入れる部分、ブーツの足を入れる部分にはファーがついていて、今の寒い季節には、とても暖かく感じられる。
いい生地を使っているからか、裏地がとてもすべすべしていて、肌触りがよく、単に着ているだけでもすごく気持ちがいい。
ケープ・ワンピース・ブーツ・手袋はファーがピンク、その他は黒でまとめられている。
前述のとおりファーがついているのと、胸元に小さめのリボンがついている他は飾りらしい飾りがついておらず、全体的にシンプルなデザインだ。
あまりゴテゴテとした装飾過多なデザインではないのも、ゆりあにとっては好ましく感じられた。衣装に「着られている」ような感じがなく、まさに衣装と一体になっているような、そんな心地よさが感じられる。

今の自分を見ていると、忘れかけていたアイドル時代の思いが甦ってくる。
今の自分を大勢の人に見てもらいたい、見せたい、そんな思いだ。
40代になった明菜は今でも定期的にコンサートを開いていて、大勢の人前に立つことはある。しかし、それは歌声を聞かせるためだけであって、年老いた自分の姿を見てもらいたい、という思いは皆無だった。
しかし、今の自分は自分でも惚れるぐらいに若く、美しく、そして可愛い。
まるで自分の若い頃と同じ・・・いや、自分の若い頃以上の容姿を持つこの娘の身体で、ステージに立ち、自分の歌声を披露したい。
そんな思いが、ゆりあの中でどんどん大きくなっていった。

北条「ゆりあ、着替え終わった~?もう急がないとホントにヤバいよ」
女性スタッフの北条がノックもせずいきなり更衣室に入ってきた。
たぶんゆりあと同じ年齢なのだろう、彼女もかなり若い。ゆりあと違い、スタッフである彼女は動きやすい服装をしている。
北条「あ、もう着替え終わったみたいね」
北条はつかつかとゆりあの傍に寄ってきた。
北条「よし、あとはメイクね。はい、ここに座って」
ゆりあ「う、うん」
北条はゆりあの身体をつかみ、無理矢理化粧台の前の椅子に座らせた。
そして化粧台の上に置いていた化粧品を使い、手早くゆりあにステージ用の化粧を施していく。
観客から少し離れたステージ上で顔を目立たせるため、普段よりは少し濃いめの化粧にはなっているが、基本的にはゆりあの元々の顔立ちの可愛さを活かした、あっさり目の化粧になっている。

着々とコンサートの準備が進む中、ゆりあの中では自分のアイドル現役時代を思い出してきていて、他人の身体になってしまった不安よりは、この姿で人前に立ちたい、歌いたい、という思いが勝り、とりあえず今はこの身体の早乙女ゆりあになりきろう、と思うまでになっていた。

北条「よしできた!」
女性スタッフ・北条の、ゆりあへの化粧が終わった。
結果的に、ゆりあの目鼻立ちを少し目立たせる程度の控えめな化粧になっている。
北条「きゃっ、もう開演1分前よ!ゆりあ、早くステージに上がって!」
北条は腕につけた、女性用としてはやや大きめの腕時計を見て慌てた表情を見せ、ゆりあの背中を叩いてステージへと誘導した。
ゆりあ「え、え、もういきなりですか!?」
北条「いまさらなに言ってんのよ、ただでさえ遅刻してんのに!ほら、早く行った行った!」
ゆりあ「こ、こんな急になんて・・・」
ゆりあは自分の中で気持ちは盛り上がっていたが、いきなり本番となると当然、焦る。しかも、今は見ず知らずの他人の身体になっているのだ、どうしても緊張してしまう。

ゆりあ「でも・・・ここまできたらやるしかないわね・・・」
ゆりあの中で、芸能界生活を30年以上続けて来た中で培われたプロ根性に火がついた。
状況に流されるままここまで来てしまったが、ゆりあは腹を決め、他のスタッフに誘導されながら、ステージへの階段を上った。






明菜「はぁ、はぁ、やっと終わった・・・」
明菜は早乙女ゆりあのコンサート開場に急いでいた。
あのあと、マネージャーの水原に無理矢理連れ去られた明菜は、スポンサーへの挨拶回りで数件、引っ張り回された。
明菜はもうこうなったらこの件を早く済ませたほうが賢明と判断し、不本意だが明菜になりすまし、なんとか挨拶回りを終えた。スポンサーとの会話中は、今日は調子が悪いと嘘をいい、ほとんどの会話は水原に任せて、なんとか切り抜けていた。
その後水原と別れた明菜は、全速力でコンサート会場へ向かった。
自分が明菜になっているなら、明菜は自分になっているはず。なら、今日のコンサート会場に、あたしの身体に入った明菜がいるはず。
明菜はそう考え、ただひたすらコンサート会場を目指した。

明菜「つ、着いた・・・はぁ、はぁ、はぁ。なによこのオバサンの身体!めちゃくちゃ疲れるじゃない!」
明菜は駅から散々走ったおかげで、完全に息が上がっていて、肩で息をするほど体力を消耗していた。
明菜「うわ!もう開演1分前じゃない!は、早く行かないと!」
腕時計で時間を確かめた明菜は、疲れている身体を気力だけで動かし、会場裏のスタッフが集まっている場所に向かった。

明菜「お、お、お待たせしましたーーー!」
明菜は切れ切れになっている息をまず整え、スタッフに向かって大声で挨拶した。
スタッフ「え?」
スタッフ「ん?」
スタッフ「あの人、誰?」
スタッフ「さあ?」
スタッフ「あー、おばさん、ここは関係者しか入っちゃいけない場所だから、出て行ってくれる?」
明菜「なに言ってんのよ、あたしは早乙女ゆりあよ!今日ここで歌を歌う予定の、今日の主役よ!」
スタッフ「・・・・・・」
スタッフ「・・・・・・」
スタッフ「・・・・・・」
スタッフ「ぷっ」
スタッフ「あはははははははは!」
スタッフ「ぶはははははははは!」
明菜「なっ、なにがおかしいのよ!あ、あたし、今大変なことになってんのよ!」
スタッフ「あはは、そりゃゆりあちゃんもあと30年ぐらいしたらおばさんみたいになってるかもしれないけど。おばさんがゆりあちゃんだっていうのは、かなり笑える冗談だなぁ」
明菜「おばさん言わないでよ、あのね、あたしはあの中野明菜と入れ替わっちゃったのよ!」
スタッフ「ん?明菜?」
スタッフ「あれ、もしかして・・・」
スタッフ「あの、中野明菜?」
スタッフ「えー!?マジで、あの中野明菜?本物かよ!?」
明菜「そうよ、身体は中野明菜になっちゃったけど、中身は早乙女ゆりあなのよ!分かってくれた!?」
スタッフ「うわー、すげー、本物の中野明菜だよ」
スタッフ「テレビで見るより、わりと老けてんのな」
スタッフ「えー、でも美人だよ。俺アイドルの頃の写真持ってるもん、年とってても明菜さん美人だよ」
スタッフ「でも、なんで明菜さんがここに?」
スタッフ「ひょっとしてゆりあ、明菜さんと親しいとか?うわ、ゆりあすげーな」
明菜「ちーがーうーってぇー!!あたしはゆりあなのよぉーーーー!」

スタッフ「あっ、もう時間だ、コンサート始めるぜ」
スタッフ「えっ、どれどれ」
明菜「えっ!?もう始まっちゃったの!?あたしはここにいるのに!あたしの身体、もうステージに上がっちゃってるの!?」
スタッフ「あっ、明菜さん、そこ行っちゃだめだよ!」
明菜はスタッフの制止を振り切り、ステージの袖の、観客からは見えないところまで駆け上がった。
明菜「い、いた、あたしだ・・・!」
明菜の遥か前方、それほど広くはないステージ上のほぼ真ん中の、マイクスタンドの前に、早乙女ゆりあは立っていた。
明菜「あーーーー!あたしの衣装着てるーーーっ!あたしだってあの衣装、まだほとんど着てないのにーーーっ!」




ゆりあ(ど、ど、ど、どうしよう・・・)
ステージ上のゆりあは、緊張の極みにいた。
会場は、即席で組み立てられたようなハリボテのセットで、そんなに規模は大きくない。むしろ、こじんまりしているといったほうがいいだろう。客席も、全て埋まっているとはいえ、もともとの客席の広さが大したことないので、観客の人数も、中野明菜が居定期的に行っているコンサートに比べたら、圧倒的に少ないほうだろう。
しかし、見ている年齢層が違う。
今日来ている客は、若いゆりあ目当ての、10代~20代の若い客がほとんどだ。しかも男ばかり。何人か中年のおじさんのファンも混じってはいるが。
客「ゆりあちゃん可愛いーーーー!!」
客「ゆりあちゃん愛してるーーーー!!」
客「ブログいつも見てるよーーーー!!」
客「結婚してーーーーーーー!!」
ゆりあがステージに出てきたときから、観客からは絶え間ない歓声が送られてきている。
若い男達が放つ圧倒的パワーに、本来ステージ慣れしているはずのゆりあも、さすがに押され気味になっていた。
さらに、衣装のスカートの丈がやや短めなこともあって、さっきから下半身にも視線を感じる。
もう何十年も、男性から好色の目で見られることなんて経験をしていなかったので、その異様な雰囲気にも、ゆりあは呑まれかけていた。

さらに。
ゆりあは、何を歌えばいいのか分からなかった。
そもそも、明菜は早乙女ゆりあがどんな人物かさえも知らない。普段どんな歌を歌っているかも知らないし、今日このコンサートでなにを歌う予定だったのかも知らない。会場に着いて着替えて、すぐステージに上がったので、スタッフに詳細を聞く暇もなかった。
コンサートというからには歌を歌うのだろうが、ゆりあは、自分が何を歌えばいいのかさっぱり分からず、頭の中がパニック状態になっていた。

客「なんでゆりあちゃんなにもしゃべらないのーー?」
客「歌まだーーー?」
客「もうコンサート始まってるんだろ?」
客「歌歌わないなら、なにかやってよー!」
ステージに現れたものの、一言もしゃべらず、何もしないゆりあに、観客のほうもざわざわとざわめき、ヤジも飛ぶようになってきた。



明菜「もーーー、なにしてんのよ!何か歌いなさいよ!!あーーっ、もう、まさか今からあたしが出て行って、あたしとこの人が入れ替わった、なんて説明できるはずもないし・・・もーーーーっ、どうしてくれんのよ、あたしのコンサートが失敗したら!」
明菜はぎりぎりと歯ぎしりし、早くも恨みの視線をゆりあへとぶつけていた。


ゆりあは、ステージに立つ緊張感、大勢の人の視線、飛んでくるヤジ、他人の身体になっているという不安、さまざまな感情、思いが自分の中で巡り巡って、もう、逃げ出したい気持ちになっていた。
しかし、そんな混乱する気持ちの中で、緊張の極みに達したゆりあは、一瞬、心の中の雑念が全て取り払われた。
そして、雑念のなくなった心の中で、ただひとつ、残ったものがあった。
それは、まさに自分という存在を支える、確固たるもの。自分が自分である存在理由。自分が最も愛するものであり、大勢の人に伝えたい、そんな思い。

それは、自分の歌だ。

ゆりあは自分の胸に手を当て、心の奥深くに沈んでいた、その確固たるもの、自分が自信を持てるもの、たとえ自分がどんな姿になろうと伝えたいもの、その存在を、再確認するように。

ゆりあ(私・・・歌いたい!自分の歌を!)


ゆりあは意を決したようにひとりうなずくと、手袋をはめた手でマイクスタンドからマイクを取り、口元に近づけた。
そして歌い始めた。
自分が中野明菜としてアイドルデビューしたときの、大勢の人の前で歌った、思い出のデビュー曲を。

明菜「うわ・・・」


本来ならここで歌にあった曲が流れるはずだったのだが、いつもと様子が違うゆりあを見て、スタッフも曲を流すタイミングを忘れていた。
曲のないまま、ゆりあの歌声だけが会場に響き渡る。

スタッフ「あれ・・・?予定していた歌じゃないぞ」
スタッフ「ん?でもこれ、なんか聞いたことある」
スタッフ「え?俺は知らないなぁ」
スタッフ「あーー!これって!」

スタッフ「中野明菜の歌だ!」



明菜「えーーーーっ!?なんで、中野明菜の歌なんか歌ってんのよ!で、でもこの歌・・・めちゃくちゃ上手いじゃない・・・」
明菜は、口では悪態をつきつつも、耳に流れ込んでくる歌声を聞いて、だんだんとその歌に聴き入り始めていた。

客「なんだよこの歌、聞いたことねーぞ」
客「過去のCDにもこんなのなかったし、サイトの試聴コーナーにもこんなのなかったよな」
客「あー俺これ知ってるよ、元アイドルの中野明菜の歌だ!」
客「え、やっぱりそうだったんだ!?でも、なんでゆりあちゃんがこんな何十年も前の歌を!?」
客「でもさ、この歌・・・めちゃくちゃ上手くね?」
客「う、うん・・・すげー、なんか聞き入っちまう」
客「ゆりあちゃんって、こんなに歌上手かったっけ?」
客「すげーよゆりあちゃん、このままプロデビューできるんじゃねぇのか?」
客「しっ、静かにしろよ、ゆりあちゃんの歌声が聞こえねーだろ」
客「そーだそーだ、ちょっと静かにしてろ!」


ゆりあは結局、一曲丸々をアカペラで歌いきった。
ゆりあ「ふぅ・・・」
最後の歌詞を歌い終え、はっと我に返ったゆりあは、急に恥ずかしさと緊張感がまたこみ上げてきた。
ゆりあ(うわ、ど、どうしよう、自分の歌歌ってしまったわ・・・私は今早乙女ゆりあって娘になっているのに)
観客席のほうは、いつの間にか完全に静まり返っている。
ゆりあ(やってしまったの・・・?ど、どうしよう、お客さん、しらけちゃってる・・・そ、そうよね、いきなり他人の、しかも何十年も前の歌を歌ったんですもの・・・は、早く謝らないと)

ゆりあは少しうつむき、唇をかみしめたあと、きっと観客席のほうに向き直り、謝罪の言葉を発しようとした。
ゆりあ「あ、あの、ごめんなさ・・・」

ワーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッ!!!!

ゆりあ「ひ、ひえ!?」
突然、会場全体が軽く震えたような、耳をつんざくような大歓声が響き渡った。
客「ゆりあちゃんすげーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
客「ゆりあちゃん歌めちゃくちゃうめーーーーよ!」
客「ゆりあちゃん歌上手かったんだな!!」
客「歌練習してたの!?ひょっとして今までわざと押さえて歌ってたとか!?」
客「いい歌だったよ、ゆりあちゃーーーーーーーーーーーーーん!!」
客「ゆりあちゃんに惚れたーーーーーーっっっ!!」
客「ゆりあちゃん結婚してーーーーーーーーーーーっっ!!」
客「いい歌だったーーーーーーっっ、CD出してーーーーーっっ!!」
客「ゆりあちゃん、明菜の曲好きなのーーーーーっっ!?ブログにも書いてなかったよね!?」
客「感動したーーーーーーーーーーーーーーーっっっっ!!」
客「まだゆりあちゃんの歌聞きたーーーーーい!早く続き歌ってーーーーーーーっっ!!」

ゆりあ「え?え?これは・・・今の、よかったのかしら・・・?」
観客からの大絶賛の声に、ゆりあは戸惑いを隠せない状態だった。


明菜「なんであたしじゃないあたしが歌って、こんなにウケてんのよーーーーっっ!!これはあたしのコンサートなのにーーーーっっ!!ま、まあ、たしかに聞き惚れるぐらいいい歌だったけど・・・こ、こんな古い歌歌うなんて、あたしのキャラに合ってないわよ!なんてことしてくれんのよーーーっっ!!」
明菜は舞台の袖で、ダンダンと床を足で鳴らし、地団駄を踏んでいた。


客「つーぎの曲、つーぎの曲!!」
客「もっとゆりあちゃんの歌聞かせてーーーーーーーっっっ!!」
客「ゆりあちゃーーーーーん、もっと歌ってーーーーーっっっっ!!」
観客からの歓声に包まれるうちに、ゆりあも、自分の歌声が観客を感動させていたことをようやく実感し始めていた。
そしてじわじわと沸き起こってくる、達成感、充実感。
大勢の観客に見られているという感覚も、今は全て快感に変わっている。
ゆりあ「ああ、これだ・・・」
年をとって忘れかけていたもの。
年をとっても歌うことは忘れないでいたが、なんとなく惰性で続けていたような気もする。でも今は大勢の人に「聞かせたい」「聞いてもらいたい」という、確固たる思いの元、歌っている。
自分の歌声が、観客を感動させている。
その確かな手応えが、ゆりあの中の中野明菜の精神に、若さと充実感、生きる希望を再び与えていた。
ゆりあ(もっと歌いたい、この、若い私として・・・)

ゆりあは大勢の観客の期待に応え、続けてアカペラのまま、2曲目を歌い始めた。





明菜「もーーーーっ、どうしてくれんのよ!それはあたしの身体よ!」
ゆりあ「え、で、でも、私も突然のことでなにがなにやら・・・」
明菜「言い訳無用!早くあたしの身体を返してよ!」

結局、あの後、全10曲を歌い終え、早乙女ゆりあのミニコンサートは大盛況のうちに終わった。
ステージを降りてきたゆりあを待ちかまえていたのは、中野明菜だった。
明菜はゆりあに詰め寄り、今までの不満を一気にまくしたてていた。

ゆりあ「そ、その、元に戻れないようだし、しばらくお互いを演じながら暮らしていく、というのはどうかしら」
明菜「えーーーっっ!?あたしに、オバサン歌手をやれっての!?そんなのいやよ!」
ゆりあ「お、オバサン・・・。で、でも、そうするしかないじゃない。私はきちんと早乙女ゆりあさんを演じてあげるから、ゆりあさんも、中野明菜を演じて生活してほしいの」
明菜「えーーーっ、やーよ、あたしは歌なんてオマケにしか思ってないのよっ!中野明菜として生きていくなんていや!」
ゆりあ「歌なら、私が教えてあげるから、ねっ、頑張りましょう」
明菜「もーーーーーーっっ、なんでこんなことになっちゃったのよーーーーーーっっ!!」
明菜は天を仰いで、おおいに嘆いた。







明菜「ほらほらゆりあっ、今日のブログ更新ができてないわよ!!コメントの返信も全然できていないじゃない!」
ゆりあ「えー、今日はお休みで特に書くことないんだけど・・・コメントの返信も、ちょっとしんどいし」
明菜「だめだめ、ブログはこまめに更新しないと、アクセス数減るじゃない!ネットアイドルは、ネットでの活動が大事なのよ!あと、ファンからの書き込みも丁寧に返事しないと、ファンが離れてっちゃうんだから!」
ゆりあ「うーん、そういうのは明菜に任せるわ~、それより私、またコンサート開きたいんだけど、一ヶ月後のこの日とか、どうかな?会場も空いてるみたいなんだけど」
明菜「まーたコンサート!?ゆりあの歌が上手いのは認めるけど、コンサートやりすぎよ!歌は副業、早乙女ゆりあは美貌とキュートさで売ってるのよ!」
ゆりあ「えーでも、また歌いたいなー。歌といえば、明菜ももうすぐ定期コンサートがあるじゃない」
明菜「あー、またやなもんが回ってきたわね・・・」
ゆりあ「いやなものって・・・明菜も最近けっこう、歌上手くなってきたじゃない。私の教え方がいいからかしら?」
明菜「ふん、そんなのあたしの才能よ!あたしってばやればできる子なのよ!」
ゆりあ「ふふ、その調子でコンサートも頑張ってね♪」
明菜「もーっ、それより、早く元に戻る方法考えてよ!もうあたし達が入れ替わって、まるまる一年よ!?」
ゆりあ「まあまあ、細かいことはおいといて。せっかく休みなんだから、二人でカラオケとか行かない?」
明菜「行かないわよっ!歌なんて、仕事だけでもう十分!」
ゆりあ「え~、行きましょうよ~、歌いたい新曲があるのよ~」
明菜「くっつかないでよ、もー、ゆりあって、本物のあたしよりワガママなんじゃないの!?」

季節は巡り、ゆりあと明菜の身体は未だに入れ替わったままだったが、お互い、相手を身体のほうの名前で呼ぶほど、入れ替わっているこの状況に慣れ、さらにお互いの精神的な距離も近くなっていた。
いつか、元の身体に戻れる日が来るのだろうか。
とりあえずは、まだドタバタしている日々が続きそうな、そんな予感がするのであった・・・。






完。
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by irekawari | 2007-09-17 11:02 | 女同士入れ替わり