白雪姫「女同士入れ替わりと、女同士の憑依が好きです。


by irekawari
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委員長がメイドに着替えたら 第6回

みのり「ほ、他のご主人様がお待ちのようなので、失礼しますねっ」
みのりは、したくはないが上杉と有田にお辞儀をして、逃げるようにそのテーブルから離れた。
別にみのりは上杉と有田専属のメイドというわけでもない、最低限の礼だけしておけば、この場から離れても何の不思議もない。
しかし、上杉と有田からはまだ注文をもらっていない。
ということは注文を取るときと、注文されたものを持って行くときの、最低2回は、上杉と有田に顔を会わせないといけない。
みのりは他の客の応対をしながら考えた。

涼子さんか瑠璃ちゃんに、代わりに接客してもらおうか・・・?

しかしこの店では暗黙の了解として、店に入ってからテーブルまで案内したメイドが、その客に対して最後まで接客することになっている。その流れでいくと、上杉と有田は、みのりが最後まで接客しないといけない。
まあ、それはあくまで暗黙の了解であって、明文化されたルールがあるわけでもないから、別に厳守する必要もない。
この店には今日初めて入ったであろうあの二人なら、そんな暗黙の了解が分かるわけもなく、たしかに、このまま涼子か瑠璃に接客してもらうのも手だ。

上杉「おーい、三希~」
有田「注文するから来てくれよ」

みのりが考え事をしているうちに、もうあの二人に呼ばれてしまった。
みのりはとりあえず今応対していた客に対してすべきことをまず終え、そのあとで上杉と有田の元へ向かった。
移動しながら店内の状況をよく見ると、涼子も瑠璃も自分の応対している客のことだけで精一杯のように見える。今日は客の多い日のようだし、実際、さほど広くない店内の席も、かなり埋まっている。
今から涼子や瑠璃に新規の客のことを頼んでも、いきなりでは戸惑うかもしれない。生真面目な智代は、同じ働く仲間に迷惑はかけたくない、それに、智代はこれまでの人生、自分のことは自分で切り抜けてきた。今回のことも、なんとかしてみせる。
智代はそう決意した。

みのり「あの、ご主人様?ここでは、うちのこと本名で呼ばんとってくれへんやろか?うちはここでは『もも』いう名前やから、『ももちゃん』って呼んでくれると助かるんやけど」
みのりはメイド服の胸のあたりについているバッジを指さし、上杉と有田に向かって見せた。
たしかに、バッジにはマジックで書いたのか、手書きの文字で「もも」と書かれている。
上杉「えー、いーじゃん別に。俺らこんなとこそう何度も来ないし」
有田「そーそー、それになんだよその幼稚園のクラス分けみたいな名前は。全然似合ってねーぞ」

みのり(悪かったなぁ、似合う(におう)てなくて!それに、この店に入ったからには、この店のルールに従わんかい!)
みのりは表情は笑顔のまま、心の中だけで怒った。

みのり「あのー、ご主人様?メイドのプライバシーの侵害やから、お願いしますから『もも』って呼んでくれへん?」
上杉「ああもう、しつこいなー」
有田「分かったよ、ももって言えばいいんだろ、ももって。果物かよお前は。ほら、今から注文すっからちゃんとメモとってくれよ」
みのり「はい、ご注文をどうぞ」

やっと注文か・・・
たかだか注文を取るだけに、ずいぶん長かった気がする。智代は精神的に少し疲れていた。

注文の内容はごく普通のものだった。
智代の記憶力なら、数人分ぐらいならメモらなくても覚えていられるが、伝票を作らなくてはいけないため、とりあえずは書いて残しておかないといけない。
智代は伝票に書く文字すらも、綺麗に丁寧に正確に、かつ素早く、スラスラと書いていく。

伝票を書き終え、念のため注文の内容を復唱してから、「失礼します」と言おうとしたそのとき。
みのり「それでは、失礼しま・・・」
上杉「そういえばさあ、今気付いたんだけど」
有田「お前のしゃべり方、うちのクラスの委員長に似てるよな」
みのり「は、はわぁっ!?」
みのりは思わず店内中に響くぐらいの大声を出してしまった。

一瞬静まりかえる店内。

みのり「はっ」
みのりはようやく、自分が必要以上に大きな声を出してしまったことに気付いた。

みのり「お、おもろい冗談やなー、でも座布団1枚ってとこやなー、え、えーかげんにしなさい!」
みのりは片手で、上杉と有田に向かってチョップするような、ツッコミ入れるようなポーズをとってみた。

周りの客は漫才かなにかかと思ったららしく、また元の、ざわざわした雰囲気に戻った。

みのり(はぁぁぁぁぁっ!なにパニくってんのやうちは!!そ、それにしてもうちが三希みのりやってバレた・・・わけではないやろな・・・でもどんどん事態は悪ぅなっとるううう!!)
みのりは頭を抱えて天井を仰ぎ見た。
上杉「ちょっと、どこまで大げさな反応してんの」


涼子(智代ちゃんオーバーアクションすぎ・・・意外とノリのいい子なのかも)
離れたところで接客していた涼子がみのりの失態を見てまたもやため息をついた。
瑠璃(ふぅ)
さらに別の場所では、瑠璃も表情を変えず、視線だけでみのりを見て小さく溜息をついた。



有田「おい、お前、本当に委員長なんじゃねえのか?」
有田がみのりを指さしながら、やけに真剣そうな顔で聞いてきた。

みのり(ば、バレたぁっ!?)
一番気付かれたくないことに気付かれ、みのりは顔が真っ青になった。
ついでに、胃がキリキリと痛む。
精神的に追いつめられている証拠だ。
本当はもっと冷静に対応すればなんでもないことなのだが、今の、焦りまくっている智代には精神的に落ち着いている余裕がない。

みのり「ご、ご主人様、なにをわけのわからんことを言うてるのかなぁ。うちは三希みのりやでぇ、見たら分かるやろ?」
みのりは顔真っ青、冷や汗かきまくり、それでもなんとか笑顔をつくり、明るい口調で返した。
上杉「顔真っ青だぞ三希」

有田「だいたい、三希はそんなしゃべり方しないだろ。その関西弁、まんま委員長の仁科のしゃべり方に聞こえるぜ。なあ、お前と委員長って、ひょっとして入れ替わってるんじゃないのか?」

みのり(さ、さらに核心に近づいとるぅぅぅぅ!!あ、有田ってなんでこんなに鋭いんや!?その勘の鋭さを、もっと勉強に活かしいや!)
みのり「い、入れ替わってるって、なに~?うち、聞いたことない単語やから分からんなぁ。それに、うちが関西弁しゃべってるんは、罰ゲームの最中やからって言うてるやろ?」
みのりは顔色はだいぶ戻ってきたが、まだ冷や汗がタラタラ流れている。見るからに怪しい。

上杉「え、有田、入れ替わってるって・・・ほんとにそう思ってんの?そんな漫画みたいなこと・・・」
有田「そのとおりだよ。どうやったのか知らないけど、三希と委員長が入れ替わったってんなら、お前のそのヘンなしゃべり方も、説明つくんだよ。おい、どうやって入れ替わったんだよ。俺たちにも教えろよ」
上杉「言われてみれば・・・そんな気がしてきたな。おい、お前が本当に三希だってんなら、普通に標準語しゃべってみろよ」
みのり「え、そやから、罰ゲームでそれはでけんのやって・・・」
有田「嘘くせーんだよ、罰ゲームなんて!小学生の言い訳じゃあるまいし。まだ言い訳するってんなら、クラスのみんなに言いふらしてやるぜ。三希と委員長が、中身入れ替わってなんかやってるって!!」
みのり(あんたのほうが小学生みたいやんか・・・)
みのりは有田の低レベルな物言いに呆れた。
しかし、ピンチなのに変わりはない。
こうなったら、たしかに口先で言い訳して逃れられる問題ではなくなってきている。

まずい。
非常にまずい。
みのりには、入れ替わりについては特に口止めもなにもされていないが、ここでこんな風に上杉と有田に知られてしまうのは、明かに後々困ることになるだろう。
このことをネタに、ずっと脅されるかもしれない。
精神病院に連れて行かれるかもしれない。

今まで数々のピンチを自分の力で切り抜けてきた智代だったが、今回は状況が特殊すぎる。

智代は学校において、みのりと特に友達というわけでもない。
みのりの入れ替わりのことを黙っていなければいけないという、決定的ななにかがあるわけでもない。
しかし、このメイド喫茶、「カフェ花音」で働いている間は、なんだか居心地がよかった。
みのりの代わりにみのりとして、メイドの格好をして働いているのが楽しかった。
涼子さんは頼れる先輩だし、瑠璃ちゃんは無口だが可愛い。
働き初めてまだ3時間程度だが、智代の人生において、ここまで充実した時間はなかったように思う。
それだけに、智代はこんな機会を与えてくれた、みのりには感謝をしていた。
・・・みのり自身は、ただ用事を代わってほしかっただけだとは思うが。
そのことを抜きにしても、理不尽なまま言い負かされるのは悔しかった。
みのりはいいかげんなところもあるが、人をバカにするようなことはしないし、言わない。

智代はとにかく、みのりのためになにかをしたかった。
しかし、今はその方法が思い浮かばない。


みのり「う、うちは三希みのりやから・・・それ以上はなんも言われへんわ」
上杉「うーん、強情だね」
有田「じゃあ、中学3年のときの担任の名前、なんて名前だった?俺とお前は同じ中学だったから、そのぐらい分かるだろ?」
みのり「ええっ!?」
みのり(み、三希さんと有田って同じ中学だったん?そ、そんなん聞いてへんよ・・・)
有田「なに今さら驚いてんだよ。やっぱ怪しいな。ほらほら、担任の名前言うか、入れ替わっていることを認めるか、どっちかにしろよなー」
上杉「そうだそうだ、早く言えよー」

みのりは返事を返せなかった。
完全に追いつめられた。

藁をもすがる思いで、店内を見渡す。
涼子は、さっき客がうっかりガラスコップを落としたのか、床に散らばっているガラス片を広い集めている。
一方瑠璃は、今来店したばかりの新しい客を出迎えていた。
間が悪いことに、二人とも手が離せない状況である。
涼子も瑠璃も、ちらりとみのりのほうを見て、「ごめん」と、謝る意味で小さく顔を動かした。

うん。
うちこそごめんな。
これは元々うちの問題やから。涼子さんや瑠璃ちゃんはなんも責任ない。
うちがもっとハキハキ対応できとったらよかったんや。
でももうほんまに・・・方法はないんかな。
堪忍なぁ、三希さん、うちでは三希さんの代わりはできへんかったわ・・・

みのりは息を大きく吸い込み、意を決したように、表情を引き締めた。
そして・・・





続く。
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by irekawari | 2007-07-16 23:51 | 女同士入れ替わり