白雪姫「女同士入れ替わりと、女同士の憑依が好きです。


by irekawari
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『ここにいる睡蓮』

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『森山大輔短編集 ここにいる睡蓮(すいれん)』
「森山大輔」先生
角川書店
全1巻




『森山大輔短編集 ここにいる睡蓮(すいれん)』の表題にもなっている、『ここにいる睡蓮』に、女から男への憑依があります。



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ネット上のとある画像掲示板でこの画像を見て、そこからこの画像が『ここにいる睡蓮』の中の1ページであることを知って、それで単行本を買ってみました。



あらすじ

有川恵(ありかわ メグム)と有川恵(ありかわ ケイ)は双子の兄妹。
恵(メグム)が兄で、恵(ケイ)が妹。
ある日、兄の恵(メグム)は交通事故により死んでしまう。
恵の魂は「幽世(かくりよ)」と呼ばれる世界へと行き、そこで「死後の世界の案内人」と名乗る少女「睡蓮(すいれん)」に出会う。
死後の世界には、人の命を具現化したろうそくがたくさん灯っていて、睡蓮は恵のろうそくの火を指で完全に消して、いざ死後の世界へ案内しようとする。
しかし、そのろうそくは兄・恵(メグム)のろうそくではなく、妹・恵(ケイ)のろうそくだった。同姓同名のため、睡蓮が間違えて命のろうそくの炎を消してしまったのだ。慌てて、兄の炎を妹のろうそくにつけ直すが、炎の揺らぎは安定しない。
このままでは妹・恵(ケイ)が死んでしまう。自分のミスによる責任を感じた睡蓮は、ケイの命を救うため、一計を案じる。睡蓮は「幽世」から離れることはできない。そこで、魂の状態のメグムに自らの身体を貸して、メグムを現世に戻らせ、ろうそくの炎の揺らぎが収まるまでの1ヶ月間、ケイの傍で監視させるようにした。

メグムは睡蓮の身体に入り、「蓮沢(はすざわ)レン」として、ケイのいるクラスへ転校生として入り、1ヶ月間、ケイを見守ることになった。
生まれつき身体が弱いケイは、学校でよく倒れていた。メグムは、倒れたケイを保健室に連れて行ったりするなど、学校では常にケイの傍にいて、彼女を見守った。規則により、ケイには、自分が兄のメグムであることは明かしてはいけない。死んだはずの兄は今ここにいる、ということをケイに打ち明けられないことをはがゆく思うメグム。
学校でよく一緒に行動しているうちに、レンとケイは親友と呼べるぐらい仲良くなっていった。ケイは、レンを見て「兄にどこか似ている」という思いも少し感じていたが、はっきりとレンが兄である、ということまでは気付いていない。兄を失って悲しみに暮れていたケイだが、レンと一緒にいるうちに、だんだんと以前の明るさを取り戻していた。

そしてケイの命の炎の揺らぎが安定する、1ヶ月目がやってきた。
その日、たまたまメグムが事故死した現場を通りかかったレンとケイ。ケイは、辛いと感じつつも、いつかは兄のことも忘れて、きちんと立ち直っていかなければいけない、とレンに語る。ケイの思いを知り、ついその場を去ってしまうメグム。妹は既に兄の思い出から卒業しようとしている。もう自分は必要ない、と悟ってしまうメグム。
そんな弱気になっているメグムに睡蓮が厳しく語りかける。ケイの中から兄・メグムの存在は消えたのではなく、心の糧になったのだと。そして今、ケイの命の炎が消えかかっていることを知らせる。
生来、身体が弱いのと、兄の事故現場を見たことで心が弱っていたケイは、ふとしたはずみで鉄道の線路へと落下してしまう。怪我をして、動けないケイ。そこへ電車が迫る。間一髪、レンが駆けつけケイを救出し、ケイは助かった。
後ろ姿で「そんな顔すんなよ?じゃあな、ケイ」と言い、手を挙げてさよならの挨拶をするレン。その姿と声を聞いて、レンが兄・メグムであったことを知るケイ。次の瞬間、レンはメグムではなく睡蓮に戻っていた。ケイに事の真相を告げ、去っていく睡蓮。兄の優しさを知り、涙を流すケイ。もう彼女は、一人でも立派に生きていけるだろう。

これで一件落着、メグムの魂も成仏するはず・・・だったが、なぜかメグムの魂は睡蓮の身体に入ったまま、出られなくなっていた。
「冗談ではない!」という睡蓮だが、メグムも、出る方法が分からない。しばらく、この混乱した状態が続きそうであった・・・。




というお話。

女の身体に男の魂が入るのは別に珍しくないですが、「死後の世界の案内人」の身体に入る、というのは珍しい気がします。

ジャンル分けするなら「憑依」になるのですが、ストーリーのほうが「女の身体に男の魂が入っていることにより巻き起こるドタバタ」よりも、「兄と妹の兄弟愛」のほうに重点を置いているので、憑依ものとしてはそれほど楽しめないかも。
とはいえさっき上で掲載した画像のように、睡蓮の身体に入ったメグムが胸を触ってみたり、体育の授業で着替えなければいけないとき、服を脱ぐことに対してメグムがドキドキして興奮するなど、憑依ものならではの要素もしっかりあるので、そういうシーンはけっこう良かったりします。とはいえ、やっぱり全体的にはそういう身体をいろいろ触ってみたりするシーンは少ないです。これは、メグムがかなり性格が良い少年で、むちゃくちゃスケベというわけではない、ということも理由にあると思います。
睡蓮は腰よりもさらに長いぐらいの黒の長髪、黒のセーラー服、スタイルもそこそこ良い、顔は美人、ということですごく「女性らしい女性」なので、メグムの魂が入っているときの、心と身体のギャップはかなりあるほうだと思います。

ケイが死にかけてしまうようなったのは、睡蓮のミスが原因で、一連の話は睡蓮が自分で起こしたミスを自分で尻ぬぐいした、という感じです。死後の世界の案内人が、生きている人を死なせかけてしまう、というのがちょっとスッキリしないところです。もともと、ケイの寿命が尽きかけていた、というのなら、「助けなければ!」という流れになるのはまだ納得できるのですが。とはいえ、生きている人間だってミスはするのだから、死後の世界の案内人だってたまにはミスするのかもしれないですが。

しかし、「有川恵(メグム)」と「有川恵(ケイ)」って・・・読みが違うだけで漢字まで全く同じじゃないですか!!これは、うっかり名前間違えてしまうのも仕方ない気が(汗)。うーん、一番の原因は、双子の兄妹にこんなまぎらわしい名前つけた、メグムとケイの両親にあるような気もします。(汗)

読み切り作品なのでページ数は少なめ。

憑依ものとしてはやや弱いかな、というのが正直な感想ですが、「死してなお妹を思いやる兄」をメインにしたストーリーはやや物悲しさも含みつつも、希望を感じさせるラストで、すっきりさわやかな読後感がかなりいいな、と思いました。
適度にギャグもあり、感動できるシリアスなシーンもありで、かなり気に入っている作品だったりします。
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by irekawari | 2007-06-03 22:48 | 入れ替わり作品の紹介・レビュー