白雪姫「女同士入れ替わりと、女同士の憑依が好きです。


by irekawari
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純情カップル入れ替わり 後編(完)

純情カップル入れ替わり
後編(完)




「うー・・・ん」
和磨は目を覚ました。
加奈美は!?
大丈夫か!?
和磨はすぐさま加奈美の心配をした。
腕の中に暖かいぬくもりを感じる。
どうやら自分と加奈美はお互い抱き合っているようだ。
そして和磨は、自分が相手の上に乗りかかるようにして倒れていることに気付く。
なんということだ。
体を張って加奈美を守ったつもりだったのに、自分が加奈美を押しつぶすような格好になっている。
「か、加奈美、ごめん・・・」
和磨は体を動かし、床に手をついて身を起こした。
和磨は、自分の下にいるはずの加奈美を見て驚いた。
「う、うわっ!?」
なんとそこには、見慣れた「自分」の顔があった。
「な、な、なんで僕がそこに!?」
和磨が驚いてさらに顔を上げると、頬にサラリと、長い黒髪がかかる。
「な、なんだこれ・・・」
和磨は自分の体を見てみる。なぜか自分は白いワンピースを着ている。
「こ、これって・・・」
「う・・・ん」
目の前の、「自分」そっくりの人物も目が覚めたようだ。
「きゃっ!わ、私・・・!?」
目の前の自分は、なぜか女言葉で驚いている。
「も、もしかして・・・か、加奈美?」
「そ、そうだけど・・・ひょっとして・・・和磨くんなの?」


和磨「そ、そんな・・・身体が入れ替わってしまうなんて・・・」
加奈美「加奈美、とりあえず部屋に行って、落ち着いてこれからのことを考えよう・・・」
和磨、いや加奈美の提案で、とりあえず二人は指定した部屋に行くことにした。




部屋の中はラブホテルとしては比較的落ち着いた内装だった。大きめのベッドがひとつ、カラオケができるテレビがあり、奥の扉からは浴槽つきのシャワー室へとつながっている。
和磨の身体になった加奈美は、ベッドに腰をおろして、うつむいている。この部屋に入ってきて、まだ一言も口を開いていない。
加奈美の身体になった和磨は、壁にある大きな鏡に自分の姿を映して、それを見ている。
身体を動かすと、加奈美の背中まである綺麗なストレートの黒髪がサラサラと揺れる。
加奈美は白いワンピースを着ている。袖は大きくふくらんでいるパフスリーブと呼ばれるデザインになっていて、さらにスカートはふわりと大きく広がっている。スカートがふくらんでいるのは、ペチコートと呼ばれるものを、ワンピースのスカートの下に履いているためだ。やや少女趣味な服だが、清純な雰囲気の加奈美には非常によく似合っていた。
加奈美「可愛い・・・」
加奈美はこんなときにも関わらず、つい、鏡の中の加奈美に見とれてしまっていた。
加奈美「あっ、ご、ごめん、こんなこと言ってる場合じゃないよね、元に戻る方法を考えないと」
加奈美はふと我に返り、少し離れたベッドに座ったままの和磨のほうに振り返る。

和磨「ごめんなさい・・・私が・・・私が全部悪いの・・・」
突然、うつむいたまま謝罪の言葉を述べてきた和磨に、加奈美は戸惑った。
加奈美「な、なに言ってるの、これは・・・事故みたいなものだし、加奈美が悪いわけじゃないよ」
和磨「いいえ違う。私があのとき暴れてしまったから・・・」
和磨はベッドに軽く腰かけ、両手は太ももの上に乗せたまま、うつむいている。
軽く握りしめられた手の甲に、ポタポタと水滴が落ちる。
涙だ。

加奈美「加奈美・・・」
加奈美は和磨に手が届くぐらいの距離まで近づいてきていたが、加奈美が泣いていることに気付き、立ち止まってしまう。
最初に、あの階段を上っていたときも、加奈美は泣いていた。そして、あのときは体を張って拒否された。そのことを思い出し、加奈美はそれ以上動けなくなってしまった。
和磨「ごめんなさい。ごめんなさい・・・私、本当にあのとき怖かったの・・・わ、私も・・・初めてだし・・・でも、私だって同意して、いいよって、言ったはずなのに・・・直前になったら・・・急に怖くなって・・・和磨くんは・・・和磨くんは本当は私と『する』ことしか考えていないんじゃないかって、そんなことさえ思っていた・・・あはは・・・最低だよね私・・・」
加奈美は、まばたきすることさえ忘れたかのように、じっと動かず和磨の言葉を聞いている。
和磨「それで・・・それで・・・和磨くん、私を抱き締めてくれたけど、私には和磨くんがいつもの和磨くんじゃないような気がして・・・・・・その後はもう、なにも分からなくなった・・・気が付いたら、私の顔をした和磨くんがいた・・・」

和磨の、ひっ、ひっという嗚咽と、ときどきずずっと鼻をすする音だけが、部屋の中に響いている。

和磨「私・・・私、和磨くんに『好きだ』って言った、和磨くんのこと好きな気持ちは絶対変わらないって思っていた、でも、でも本当は心の底では和磨くんのこと信じていなかったの・・・だから、だからあんなことをしてしまった・・・私、私・・・自分の心がこんなに醜いなんて知らなかった・・・・!!」
和磨は涙で濡れる手の甲を反対向けにし、手のひらを上にして自分の手をながめた。
和磨「だから・・・だから・・・これはきっと罰・・・神様が、醜い心の私に与えた罰。でも・・・それに和磨くんまで巻き込んでしまった!!私だけが、罰を受けるべきだったのに・・・。私なんか、あのとき頭をぶつけて死んでしまえばよかったんだ!!」
和磨はうつむいていた顔をあげ、加奈美のほうを向いた。
加奈美はこの部屋に入って初めて和磨の顔を見た。
その目からはとめどなく涙があふれ、目も真っ赤だ。顔も興奮により真っ赤で、鼻からは鼻水が垂れている。
和磨「私の身体じゃ・・・和磨くんの夢も叶えられないよね・・・私、和磨くんから夢まで奪っちゃって・・・本当に、本当にごっ、ごっめっっんなっさっっっ」
感情が高ぶりすぎて、激しくすすりすぎて、言葉が続かない。
和磨は再びうつむき。
和磨「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ごめんなさい・・・・・・・・ごめんなさい・・・・・・」
小さく、絞り出すように言葉を続けた。
今なおすすり泣いているためかその体は小刻みにビクンと震え、ときたま、
和磨「ひぃーーーーーーーーーーーーーーーー」
という悲痛な、声にならない声が喉から漏れる。


ここまで、体をぴくりとも動かさず、ただただ和磨の謝罪の言葉を聞いていた加奈美。
泣いている和磨にさらに近づき、足先同士が触れるほどの距離でしゃがみこみ、下から和磨の顔をのぞきこむように顔をあげ、そっと右手を、和磨の左頬の添えた。
左頬にあたたかい温もりを感じ、一瞬、和磨の泣くのが止まった。
加奈美「加奈美」
優しい、いたわりを含んだ声が聞こえる。
和磨は下を向いていた視線を、声がしたほうへ向ける。
そこには、自分を見上げる、加奈美の静かな表情があった。優しく微笑んでいるようで、それでいて今にも泣き出しそうな、そんな、いろんな感情を含んだ表情。
和磨「和磨くん・・・」
自分の、好きな人の名前を呼ぶ和磨。
いつしか、その目から流れ出していた涙が、止まっていた。

加奈美「ごめん。謝らなきゃいけないのは、僕のほうだよ」
和磨「ーーーーーーーーーーーーー」
んっ、んっ、と口を閉ざしたまま無言で首を左右に振り、「それは違う」と意志表示する和磨。
また、その目から涙があふれ出しそうになる。
加奈美「いや。全部僕が悪いんだ。僕は・・・僕は・・・加奈美が不安に思っているなんて、考えもしなかった・・・僕が、自分のことしか考えていなかったから。僕は、男らしく加奈美をリードしなきゃ、とか、本番で、失敗しないようにうまくやろうとか、そんな、自分の体裁しか考えていなかったよ。これから、加奈美と一緒に、加奈美とひとつになろうとしてたのに、僕は、僕のことしか考えていなかったんだ。こんなんじゃ、うまくいかなくて当然だよ。だから、今のこの現状も、僕ひとりが招いてしまったことだ。」
加奈美は和磨に語りかけている間、ずっと和磨の頬を優しく撫でている。
和磨にとって、その手の感触はとても気持ちよく、あたたかい。
胸の奥が痛い。
優しくされればされるほど、自分が取り返しのつかないことをしてしまったことを実感してしまう。
和磨「ちっ・・・・がっう・・・・」
加奈美「加奈美?」
和磨「違う・・・私が悪いの・・・和磨くんは・・・和磨くんは何も悪くない・・・こんな・・・こんな私のことなんか、かばうことないよ・・・」
この場を去りたい。
そしてそのままこの世から消えてなくなりたい。
和磨を大切に思っているからこそ、自分のような存在は和磨の前からいなくなるべきだと、加奈美は思った。
和磨は、加奈美が自分の頬に触れている手をつかみ、離そうとした。
が。
それより早く、加奈美の左手が、和磨の手をつかんでいた。
息を呑む和磨。
手首に感じる、強い感触。だが、痛くはない。
そして加奈美の視線は、まっすぐに和磨の目に向けられている。
「自信」というものを完全に喪失している和磨は、最初その視線から目を逸らそうとした。
しかし、目を逸らせない。
視線を外すことができない。
好きな人が、みつめているから。
好きな人だから。
好きな人から、視線を外すことなんてできない。
好きな人だから、いつまでも見続けていたい。
手首を握る力強さも、まっすぐな視線も、加奈美の、加奈美の中の和磨の、強い意志の現れだった。

加奈美「僕は加奈美のことが好きだ。」
ボッ。
一瞬にして、和磨の顔が真っ赤になる。
和磨「なっ・・・なっ・・・か、和磨くん!?」
突然、正面きって「好き」だと言われ、戸惑う和磨。
加奈美「加奈美は、僕のことが好き?」
なんの気負いもないその言葉は、和磨の中の加奈美の心に、染み渡るように響く。
和磨「私は・・・・」
和磨は、空いているほうの手を、自分の手首を握っている加奈美の手にそっと重ねた。
和磨「私も・・・・」
次の一言を言うため、和磨はゆっくり息を吸い、止め、ゆっくりと、相手に伝わる声で。
和磨「わたしも・・・和磨くんのことが・・・好きです・・・」

加奈美「ほら。だったら、なんにも問題ないじゃないか」
加奈美は、ごく自然に和磨に対して笑いかけた。
自分の顔のはずなのに、その笑顔があまりにもまぶしくて、和磨の顔の赤みが一段と増す。
加奈美「僕は加奈美が好き、加奈美も僕のことを好き。僕と加奈美は、もう二人でひとつなんだ。これから、大きな失敗、小さな失敗、いろいろあると思う。それらは、二人で乗り越えていこうよ。今日のことは、本当にごめん。自分ひとりで舞い上がっていて、加奈美の気持ち、考えていなかったよ。でも、これからは加奈美の気持ちを考えて行動する。加奈美を絶対悲しませたりしないよ。だから・・・今更だけど、僕のこと、許してくれるかな?」
和磨「ゆ、許すも許さないもないよ、悪いのは和磨くんのことを信じていなかった私なんだから・・・私は、許してもらおうなんて思ってない・・・だけど、どうしたら和磨くんに償えるのかも、分からない・・・だから・・・ごめんなさい・・・」
加奈美「だめだよ、加奈美。もう謝るのは無し。僕たちは、謝るために付き合い始めたんじゃないし」
和磨「で、でもそれじゃ・・・」
加奈美「加奈美はさっき、僕のことを信じていないって言っていたけど、それは今でも?今でも、僕のことを、信じられないかな?」
加奈美の問いかけは、和磨に強く迫ったり、特定の答えを強いるような、そんな脅迫めいた問いかけではない。
体や耳に対してではない、和磨は、加奈美の心に、優しく、一言一言、いたわるように言葉をかけている。
和磨はほんの少しの間黙っていたが、すぐに加奈美に対して答えを返した。
加奈美「し・・・んじられる・・・信じたい・・・信じてるよ・・・和磨くんのこと好きだから・・・信じてる・・・!でも、たった一度だけど、私は和磨くんのことを信じていなかった・・・こんな私でも・・・信じてもらえるのかな・・・・・・す・・・きでいてくれるのかなぁっ」
和磨の優しさに触れ、逆に自分を追いつめていた加奈美の感情が、コップから水があふれ出すように、爆発寸前になる。
加奈美は今まで手を和磨の頬や体に触れさせていたが、その手を離し、すっと立ち上がり、座ったままの和磨を、ぎゅっと抱きしめた。
女の子の身体なので、力強さはない。
さらに、加奈美の身体のほうが小柄なので、抱きしめているといっても、逆に加奈美のほうが和磨にしがみついているようにも見える。
しかし、どんな不器用な格好であっても、力強さはなくても、その抱擁には、和磨の優しさといたわりが込められていた。
抱きしめる腕の体温が、やわらかな感触が、固い氷に閉ざされていた加奈美の心を溶かしていく。

加奈美「僕は加奈美を信じているし、加奈美を好きだ。そして加奈美を愛している。それは、僕の身体が女になって、加奈美の身体が男になっても変わらない。元に戻る方法はきっとみつけるつもりだし、もしもみつからなくても、僕はずっと加奈美の傍にいる。だから、死んでしまえばよかった、なんて言わないでよ。加奈美のいない人生なんて考えられない。僕が生きていくってことは、加奈美と一緒に生きていくってことなんだから。僕の夢も、たとえ女性の身体であっても叶えてみせる。女性で初なんて、それはそれでかっこいいんじゃないかな?あと、さっきも言ったけど、謝るのはもう無しね。自分のことを棚にあげるみたいだけど、僕は加奈美に、ずっと笑っていてほしいと思っているんだ。あ、そうだ、今度謝ったら、罰として加奈美は僕にキスすること!って、これはちょっと調子に乗りすぎかな?」
あはは、と頭の後ろを手でかいて、自分で照れ隠しする加奈美。
見ると、和磨はまた無言で、うつむいたままでいる。
加奈美「あ、ご、ごめん。僕ばっかりぺらぺらしゃべりすぎたかな」
本当に調子に乗りすぎてしまった、と加奈美が後悔していたとき。
和磨「ごめんなさい・・・」
加奈美「か、加奈美・・・」
なおも謝る和磨。加奈美は、自分の思いが伝わっていなかったのかと思ってしまうが・・・
和磨「キス・・・・」
加奈美「へ?」
和磨が意外な単語を口にしたことで、思わず間抜けな声を出してしまう加奈美。
和磨「あ、謝っちゃったから・・・その・・・罰として・・・キスしても・・・いい?」
加奈美の腕の中には、顔を真っ赤にして、自分が大胆なことを言ったことを全力で照れながら、それでもなお、熱い視線を送っている、和磨の、いや加奈美の視線があった。
加奈美「うん」
加奈美は短く一言だけ肯定の返事をすると、目を閉じている和磨の唇に、自分の唇を重ねた。









和磨「ねえねえ、身体入れ替わっちゃってるなら、そのうち、呼び方も変えなきゃいけないかな?私は加奈美ちゃんっ呼んで、和磨くんは私を・・・和磨?って呼んだほうがいいかな?」
加奈美「うーん、もしも、元に戻れないならそうなるかもしれないけど、今はまだ、加奈美の名前、いっぱい呼びたいな。加奈美、愛してる」
和磨「うん、私も、和磨くんを、いっぱいいっぱい、愛してるよ」







完。




後書き。

ここで終わりです。
お互い好きだということを再確認して、そのまま、入れ替わった身体のままセックスに突入、という展開も考えていたのですが、セックス描写苦手なので、やめました(汗)。
少しぐらいは入れ替わったままのセックスという展開も考えていたのですが・・・キスして、舌入れて、服脱がしあったり、風呂入って湯船の中でお互いの胸やらおちんちんやら触り合いしたり、とか・・・あー、やっぱ書いてみればよかったかな。

入れ替わりがあるものの、ほとんど会話だけで終わっちゃってるし、そもそも「入れ替わりもの」である必要がないような話ですね(汗)。
私、「恋愛もの」が好きなので、入れ替わり要素を絡めつつも、ちょっと本格的に恋愛を書いてみたくなったので、書いてみました。


あと、「女の子が泣いている」のをちょっとリアルに書いてみたかったのもあります。
漫画や小説だと、ヒック、ヒックとか言わせたら、もうそれだけで「泣いている」ってことになるじゃないですか。
でもそういうパターン化した泣き方じゃない、すごく現実的な泣き方を描いた作品がありました。
漫画「げんしけん」で「春日部咲(かすかべ さき)」がボヤ騒ぎを起こして、そのことを悔いて泣くシーンがあるのですが、感極まって「ひぃーーーーーーーーーー」って泣くシーンがあるんですよね。ああ、たしかに、人間って泣いているときすごく感情が高ぶったら、そういう泣き方になるなーと思い、すごく印象に残っているシーンです。で、それを自分の文章の中でもやってみたくて、そういうシーンを書いてみました。
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by irekawari | 2007-05-21 23:52 | 男と女の入れ替わり小説