白雪姫「女同士入れ替わりと、女同士の憑依が好きです。


by irekawari
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小説「13月と13週と13日と満月の夜」

女同士入れ替わりを扱った小説
「13月と13週と13日と満月の夜」の紹介。



作者は「アレックス・シアラー」、外国の方です。



主人公はカーリーという名前の12歳の女の子。
カーリーは自分におばあちゃんがいないため、「優しいおばあちゃん」に憧れていた。
あと、自分に姉や妹がいないため、「姉妹」、あるいは「親友」にも憧れていた。
カーリーは学校でメレディスという女の子と知り合った。メレディスは、カーリーと同い年のわりには、大人びた子供だった。メレディスにはグレースという祖母がいた。ある日、カーリーはグレースと話をして、グレースに「実は自分こそがメレディス」だと知らされる。グレースは魔女で、メレディスの若さを狙って、魔術で自分達の身体を入れ替えてしまったという。カーリーは、本物の身体を取り戻す手伝いをする決意をする。
そして作戦決行の日。まずメレディスを薬で眠らせてから、入れ替えの呪文を唱える計画だ。しかし、いざメレディスを眠らせようとしたとき、なぜかカーリーのほうが眠ってしまう。目覚めたとき、なんとカーリーはおばあちゃんの身体になっていた。
実は、魔女は2人いた。グレースとブライオニー。2人は年老いた姉妹である。
まずブライオニーが、若いメレディスと入れ替わる。老婆のブライオニーの身体になってしまったメレディスは、どこかへ追放されてしまった。
次にグレースが、メレディス(中身はブライオニー)の祖母のふりをする。若いカーリーに、自分こそがメレディスであるという、嘘を言って信用させる。そしてグレースが、油断しきっているカーリーと入れ替わる。
こうして、若いメレディスとカーリーは揃って、老婆のグレースとブライオニーによって、身体を入れ替えられてしまう。
老婆になったカーリーは、両親に全てを話しても信用してもらえず、ついに老人ホームに送られてしまう。
その老人ホームで、なんとカーリーはブライオニーの身体に入った、本物のメレディスと出会う。
そして老人ホーム内の自分の部屋に、グレースの荷物があることを知る。その中には、身体を入れ替えることのできる呪文が書かれた、魔術の書があった。入れ替わってから13ヶ月と13週と13日経ってしまうと、もう元に戻れなくなってしまう。それまでに、もう一度入れ替えの呪文をとなえなくてはいけない。
カーリーとメレディスは老婆の身体で苦労しながらも、元の自分がいる家まで帰ってくる。そして、時間ギリギリで、呪文は唱えられ、カーリーとメレディスは無事、元の身体に戻ることができた。グレースとブライオニーは、今まで自然の摂理に反して生きてきた反動からか、ちりになって、消えた。
カーリーは入れ替わっていたときのことを誰にも話さないことにした。誰も信じてくれないだろうから。そのかわり、これからおばあちゃんをみかけたら、優しくしてあげようと思った。





というお話。

単純に、主人公が、老婆と身体を入れ替えられてしまった女の子の身体を取り戻す手伝いをする、という話だと思っていたので、「若い女の子の心が入っている老婆」こそが魔女で、しかも魔女は2人いた、という二重のトリックともいうべき展開は、初めて読んだときはかなり驚きました。
この話のように、「実は入れ替わっていないのに、入れ替わっているようにみせかけて信用させ、その後で本当に入れ替わる」という手口は他では見たことがないので、すごく斬新に思えました。

あとこの本で特筆すべきは、「老婆の身体の不自由さ」を、これでもか!というほど細かく書いているところ。数ある「年寄り」との入れ替わりものの中でも、この本が一番「老人の身体の不自由さ」について書いていると思います。
そして文章が、基本的に「自分視点」で書かれているので、もし自分が老婆と入れ替わったらどうなるか、という問いについての答えがしっかり書かれています。
・・・しっかり詳細に描かれすぎているので、カーリーやメレディスがむちゃくちゃかわいそうです。「入れ替わったことによって主人公が悲惨な目に遭う」度合いについても、この本は群を抜いていると思います。
12歳の、本当にまだまだ子供と、体中にガタがきて日々の生活にも苦労するような老婆が入れ替わるという、年齢のギャップ差だけでもものすごいのに、入れ替わった後の周りからの扱いもかなりひどいので、入れ替わっている間のシーンは、読んでいてかなり鬱になります。
なので、あんまり、何度も読みたい作品ではないです。
途中、ひどい目には遭うけど、最後には元に戻るのでまだいいですが、これでもし元に戻れないという展開だったら、私の「二度と読みたくない入れ替わり作品」のリストに入っていたと思います。



あと、私はこの話、「子供と老婆」が入れ替わるということで、「身体は老婆になってしまって、体を活かしたことはできないけど、子供らしい豊かで斬新な発想とアイデア、知恵と機転で、奇抜な入れ替わり作戦をたて、それが見事に成功して、元の体を取り戻す」みたいな、最後の最後で大逆転!な展開を予想していました。
しかし実際は、カーリーはほとんど状況に流されるままで、あんまり自分から「身体を取り戻そう!」とはしないです。入れ替わっている間はむちゃくちゃ悲惨な目に遭うから、最後には、それらの鬱憤を晴らすような、爽快感あふれる逆転劇があるんだろうなーと思っていたので、そのへんはちょっと残念なところでした。
老人ホームで「運良く」メレディスと会えて、そこで「運良く」魔術の書をみつけ、元に戻る呪文が判明したから、じゃあ元に戻ろうか、という感じの、なんだか流されるまま、みたいな後半の展開がちょっと物足りなかったです。

あとカーリーは老人ホームに入れられる前、両親に自分が本物のカーリーだと分かってもらうため、必死に説得するシーンがあります。ここでカーリーは、本当なら「自分と両親しか知らないこと」を言って、それで自分が本物だと分かってもらおうとするシーンがあります。
入れ替わりものだと、こういう「他人は絶対知らないこと」を言ってみせて、自分こそが本物だと証明するシーンがたまにあります。「他人は絶対知らないこと」を言うのは、入れ替わりものだと最後の切り札的存在なのですが、この作品では、その最後の切り札を使ってもなお、信じてもらえなシーンがあります。これはなかなか珍しい気が。




あと魔女のグレースとブライオニーは、本当に人を不快にさせる言動が得意です。読んでいる私が、本当に不快に思うほど。悪意を持って若い子と入れ替わるのも、タチが悪いどころじゃないし、最後にちりになって消えたぐらいでは鬱憤が晴れないほど。
話の中の、メレディスがグレースの年老いた身体に入るはめになるシーン。
幽体離脱して、魂が身体から離れるメレディス。帰ってきたら、身体はもうグレースの魂に入られてしまっていた。メレディスはグレースに言われます、「早く身体に入らないと死んでしまうよ」と。身体をなくしたまま、孤独な霊になるか、老婆の身体に入るか、選択させます。・・・意地が悪いどころじゃありません。メレディスが老婆の身体に入ったら入ったで、とことん「年寄り」であることを実感させるようなことをさせます。いじめにしたって陰険すぎます。

最後、時間ギリギリで元に戻るという逆転劇より、老婆の身体で悲惨な目にあっているシーンのほうがよほど長いし印象も強いので、とにかく読んでいて心が鬱になる作品です。





どちらかというとハッピーエンドが好きで、あまりにもダークな展開が嫌いな私としては、女同士入れ替わりではあるものの、あんまり人に胸を張ってお勧めしたくはない作品・・・だったりします。
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by irekawari | 2007-04-26 23:50 | 入れ替わり作品の紹介・レビュー