白雪姫「女同士入れ替わりと、女同士の憑依が好きです。


by irekawari
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灼熱の料理人 クッキングファイター・ダイゴ第48話 (全4回のうち4回目)

灼熱の料理人
クッキングファイター・ダイゴ

第48話「最終章・其の一 ダイゴよ気付け!!罠に堕ちたメイリン」
(全4回のうち4回目)





メイリン「はぁぁぁぁぁぁぁ」
とっさに思いついた作戦が成功したのは良かったが、ダイゴのあまりの変わりっぷりに、ちょっと気圧されてしまい、精神的に少し疲れ、思わず気の抜けたような声を出してしまった。
ダイゴは料理が生き甲斐だから、料理に関することを言えば、気をひくことができると思って言ってみたのだが、あまりにあっさりと、あまりにもうまくいったので、かえって拍子抜けしてしまった。
しかし、これでダイゴの興味は完全に料理に移った。もう、完全に壁の向こうの宮内玲子を、本物のメイリンのことを気にしていない。
メイリンの目の前でダイゴに告白し、ダイゴを自分のものとすることで、メイリンに絶望を味あわせてやる計画は失敗したが、まあ、これはこれでいいだろう。
どうせあの女は、これから死ぬまで永遠に地下暮らしが続くのだ。
もう会うこともない。
これからは、この私がメイリン=シャミーなのだ。
メイリン「ふふふっ、じゃあね」
メイリンは壁の向こうの宮内玲子に向かって、最後の挨拶をし、ダイゴを追ってトレーラーの入り口に向かった。




メイリンがトレーラーの荷台から出て、地面に下りると、もうかなり日は傾いていた。
辺りの景色が、夕日を浴びてオレンジ色に染まっている。

ダイゴ「メイリン、早く乗れ!店まで、全開スピードで帰るぞ!」
トレーラーから降りたすぐのところで、ダイゴが自転車にまたがり、メイリンに向かって後ろの荷台をむけ、自分は顔だけ振り返った状態で待っていた。
メイリンは自転車の二人乗りなんてしたことないのでちょっと戸惑ったが、やがて自転車の荷台に横座りの姿勢で腰掛け、上半身だけ90度捻ってダイゴのほうを向き、そのまま自分の上半身とダイゴの背中を密着させ、最後に両腕で、ダイゴの筋肉質だが引き締まっている胴をぎゅっと抱きしめた。
ダイゴ「よし、とばすぞ!メイリン、しっかり掴まってろよ!!」
メイリン「え!?きゃ・・・」
ゴッ!
という、高速で自転車のペダルをこぐ音がしたかと思うと。
まるでスタントをするバイクのように、自転車の前輪が浮いた。
メイリン「きゃああああああああ!」
ダイゴ「りゃあああああああ!!」
メイリンはそのまま後ろに転倒するかと思って叫び、思わずダイゴに掴まる腕の力を強くした。が、自転車の前輪はそれ以上浮かず、ふわりと地面に着地したかと思うと、今度は後輪から白煙を巻き上げて、まるでロケットか!?と思えるほどの加速力で、前方に向かって走り出した。
もはや自転車を超越したその超スピードに、メイリンは悲鳴をあげたくなってしまったが。
腕に伝わる固くがっしりした感触と、あたたかい体温を感じていると。
ダイゴを信じていれば怖いことはなにもない。
そして、この腕をずっと放したくない、そう心の中で思った。



一方、トレーラーの荷台の中に一人取り残された宮内玲子は。

玲子「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
さっきのメイリンのごとく、玲子もまた、疲れ切った様子で、半開きになった口から気の抜けたような声を出していた。
体は椅子の背もたれに完全にもたれかかり、頭も後ろにだらんと下げ、顔は真上の、天井・・・というか頭上の巨大ヘルメットに向けられている。
玲子「あのバカ・・・あそこまで料理バカだとは思わなかったわ」
口ではダイゴをけなす言葉を言いつつも、本心ではそうは思っていなかった。単に軽口を叩いているだけである。
最後の最後で、またメイリンの策略にひっかかってしまったようなものであるのに、玲子の心はなぜか晴れやかであった。
残念ながら自分を助けるまでには至らなかったが、ダイゴはあたしに気づいてくれた。あたしがここに居るって、分かってくれた。正確には、本物のメイリン=シャミーがここにいると知っての行動ではなかったのだが、玲子にとってはそれで十分だった。
少なくとも、今は絶望は感じない。
ダイゴ当人は・・・料理に吊られて行ってしまったが、ダイゴの心は、すぐそばに感じられる。
自分はひとりじゃない。
いつだって、ダイゴと一緒なんだ。
そう思うと、希望が感じられる。
状況は決して良くなっていないが、どんな困難も障害も、乗り越えようと思える。

キスしたり、抱き合ったりするだけが人のつながりではない。
宮内玲子は、いやメイリンの心は、ダイゴとの心のつながりを今しっかりと実感していた。


コツコツ。
トレーラー内に、複数の人物による靴音がする。
そして、玲子の目の前にあった壁が、プシュッと音を立てて上昇し、天井に収納された。
さっきまで壁があったところには、5~6人ほどの黒服が立っていた。
黒服達は皆サングラスに黒いスーツ、黒い革靴といった服装で、全員が同じような見た目だ。せいぜい、背の高さが違うことぐらいしか分からない。
黒服「宮内玲子。メイリン様の命令により、お前を地下の工場に連れて行く」
黒服の集団のうちの一人が、玲子に向かって告げた。
どうやら、黒服達は玲子とメイリンを、身体のほうの名前で呼ぶように統一されているようだ。
玲子「あたしはメイリン=シャミーよ。人の名前で呼ばれたくないわね」
玲子は目の前の黒服の目を見据え、強い口調で返した。
ガッ。
次の瞬間、黒服は玲子の左頬を固く握った拳で殴っていた。
黒服「生意気な口を聞くなよ。もうお前は御門にとって単なる労働力なんだ。せいぜい、後何年生きていられるかの心配でもしていろ」
玲子は殴られた衝撃で、顔が右を向いたままでいたがすぐに正面に向き直った。その左頬には、今できたばかりの痛々しいアザがある。
玲子「痛い(いったい)わね」
玲子は目の前の、自分を殴った黒服を、上目遣いで睨みながら、吐き捨てるように言った。
黒服「生意気な口を聞くなと言ってるんだ!」
ガコッ。
今度は黒服は玲子の右頬に肘打ちを見舞った。さっきの拳のときより力を込めて。
肘打ちを食らった衝撃で、玲子の顔が大きく左を向く。玲子の右頬には、左頬と同じようなアザがついていた。
玲子はそのままの姿勢でプッと口から何かを吐いた。血だ。口の端から、血がツツーと滴り落ちる。
玲子は顔は左を向いているが、視線は目の前の黒服を見据えたままだった。
黒服「フン、地下へ連れて行く前に、御門の恐ろしさをその身に教えこんでやったほうがいいな」
あくまで反抗的な態度を崩さない玲子を見て、黒服は脅しの言葉を口にする。
玲子は身動きがとれない。
黒服は5~6人いる。
この状態でボコられたら、玲子には為す術がない。
目の前の黒服以外の黒服も、じりじりと玲子への距離を詰めてくる。
玲子「はン、御門御門言うけど、あんたらもちっぽけな下っ端のくせに。御門の名前を借りないとなにもできない腰抜け連中が、あんたらこそ偉そうな口聞いてんじゃないわよ」
黒服「なんだと・・・?」
玲子「それに御門だって、この程度の組織、あたしらの国(中国)じゃ、腐るほどあったわよ。設立して3年程度の組織じゃ、まだまだガキんちょの組織じゃない」
黒服「この女・・・」
黒服「言わせておけば!」
黒服「宮内玲子、我々は、お前を生きて地下へ連れて行け、と命令された。つまり、殺してはいけないが、死なない程度なら何をやってもいいということだ」
玲子「身動きとれないか弱い女に、大の男が寄ってたかって・・・情けない」

玲子「ねえあんた、あんた何番なのよ?」
黒服「なんだ?いきなり」
御門グループの下級構成員である黒服連中は、それぞれナンバーがつけられ、普通は名前ではなくそのナンバーで呼ばれることになる。御門と何度もやり合っている玲子は、黒服のナンバー制のことも知っていた。
玲子「何番かって聞いてんの」
黒服「そんな質問に答える必要はない!」
玲子「あっそ。別にいいけど。もう覚えたから」
黒服「なんだ、何を覚えたんだ」
玲子は左に向いていた顔をゆっくり正面に戻しながら、睨め付けるような視線のまま、口元に酷薄な笑みを浮かべてこう言った。


玲子「あんたの声」


その声はたしかに玲子の声なのだが、とても同一人物が発したとは思えないほど、重く、暗く、凄みを伴ったものだった。そこには、脅しや暴力目的ではない、ある感情が込められていた。
黒服はまるで背中にツララを入れられたかのように、全身をビクリと震わせた。
そして激しい悪寒が全身を包む。まるで体中の生気を抜かれたかのような、異様な感覚。全身の穴という穴からは、冷や汗が出ていた。

黒服(な、何だ・・・!?中身はただの19歳の小娘だと聞いている。な、なんで俺はそんな小娘の言葉ひとつでここまで震え上がっているんだ・・・!?)

玲子「たとえ黒服が千人同時にしゃべってたって聞き分けてあげるわよ。ここ(御門)をブッ潰すときに、ちゃんと『お礼』しなきゃね・・・あたしの頬を二度も殴ってくれたあんたに、ね」

玲子「ねえねえあんたら、『漆黒の凶星』って名前、知らないでしょ?」
黒服「・・・・・・・・」
黒服達は本当にその名を知らないため、正直に、無言で首を左右に振った。

玲子「でしょうね。知らなくて当然よ、知ってたら・・・」



玲子「あんたら、今ごろここにいないから」


玲子「それとあんた、今から首の骨、鍛えていたほうがいいわよ?」
玲子は目の前の、自分を殴った黒服に向かってなおも続けた。
首を少し傾け、さらに首を少し捻って首にかかる髪を後方に流し、「首」をさらけ出して強調して相手に見せながら。
玲子「あたしが『お返し』するとき、一撃で逝きたくはないでしょ?」



その後、黒服達は無言でトレーラーの荷台から出て行った。
玲子に暴力をふるう者や、言葉を発する者すらいなかった。
黒服達が出て行った直後ぐらいに、ドルンとエンジン音がした後、ガタガタと車内が揺れ始めた。
どうやら、トレーラーが発進したらしい。
この車内の揺れがおさまったら、そこが奴らの言う御門の地下工場なのだろう。

敵の中に飛び込めるのなら願ってもない。
いい加減イライラもたまっているので、ちょっと発散してもいいだろう。
この際だから、徹底的に叩いておこう。

玲子「・・・・はっ!」
玲子は頭をぶんぶんと左右に振った。危ない考えを頭から追い出そうとするかのように。
玲子「いけないいけない、すっかり昔のあたしに戻ってたわ。日本に来てからは大人しくしようと思ってたのに」


玲子がさっき言っていた「漆黒の凶星」、それは玲子、いやメイリン=シャミーが中国に居た頃の、彼女の通り名である。
ただし、彼女自身が名乗っていたわけではなく、裏世界の住人がメイリンに対して勝手につけた名前である。
3年前に日本に来るまで、ダイゴとメイリンは生まれ故郷でもある中国に居た。
ダイゴは熱血直情行動派なので、とにかく後先を考えず行動する。特に、料理が絡むとそこにどんな障害があろうと、お構いなしに突き進んだ。時には、中国の裏社会の住人の反感を買うこともあった。そんなとき、ダイゴは得意の武術で、自分の行動を邪魔する者を叩き潰していた。ほとんどの場合、ダイゴの考え無しの行動が原因なのだが、別に彼は暴力を振るいたいわけではない。ただただ、美味い料理、美味い食材を追い求めているだけなのだ。ただ、そのダイゴの暴走が、裏社会の住人にとっては「喧嘩を売っている」ととられてしまうわけで、中国全土の行く先々で、命を狙われることは日常と化していた。当然、ダイゴのパートナーとしてずっと一緒にいるメイリンも、その戦いに巻き込まれる。『気』こそ使えないものの、武術の腕前はダイゴにひけをとらないメイリンのは、数え切れない実践の中で、さらに実力を増していた。ダイゴと共に、死にかけたことも一度や二度ではない。生きるか死ぬかの死線を乗り越えていく中、メイリンはその道のプロをも上回る力を身につけていた。
こうして、裏社会のいくつもの組織が、ダイゴとメイリンによって潰されていった。2人の驚異の力に、裏社会の住人達は戦慄し、いつしか、誰からともなくダイゴとメイリンを、ある通り名で呼ぶようになった。
ダイゴは、表社会でも使われている、「灼熱の料理人」がそのまま使われた。
メイリンは、ほとんど常に黒色のチャイナドレスを着て行動していた(このチャイナドレスは、メイリンの母親の形見である)。
そのため、裏社会の住人はメイリンのその服の色と、彼女が自分たちの組織に凶事をもたらすことから、『漆黒の凶星』と呼ぶようになった。

「灼熱の料理人」と「漆黒の凶星」のペアは中国の裏社会で恐れられていたが、一方で、裏社会の住人の中にもダイゴの料理の腕に惚れ込んで、ダイゴとメイリンに味方して、危ないところを匿ったりする者もいた。彼ら協力者のおかげでダイゴ達が命を狙われる機会も少しは減ったが、それでもやはり限界はあった。
そこでダイゴは中国を出ることにした。理由は2つ。一つは中国の裏社会で自分たちが危険な存在になっているため、そのほとぼりをさますため。もう1つは、まだ見ぬ世界の未知の料理を体験するため、であった。
そして3年前、中国を出たダイゴ達が新たな新天地として選んだのが、ここ日本だった。ダイゴはメイリンと共に灼熱飯店という店を構え、現在に至る。

ちなみに「漆黒の凶星」という通り名、メイリン本人はもちろん気に入っていない。
年頃の女の子がそんな不吉そうな名前をつけられても嬉しいはずがない。
なので、これまでメイリンがその通り名を自ら口にしたことはなかったので、さっき黒服に向かって言った言葉が初ということになる。
玲子「あーあ、自分であの名前言うようになっちゃおしまいね。でもまあちょっとビビらせとかないと、あいつら調子に乗りそうだったし。いいわよね、別に」

玲子「決勝大会まであと一週間・・・ダイゴも、決勝で出す料理のために頑張っているんだから、あたしはあたしで、自分のできることをしなきゃね。それで・・・」
必ず、ダイゴの元へ帰ってみせる。玲子は、メイリン=シャミーは、心の中で誓っていた。







続く




後書き。

「漆黒の凶星」は、「機動戦士ガンダムSEED ASTRAY」に登場する「ジャン・キャリー」の通り名「煌めく凶星『J』」が元ネタです。
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by irekawari | 2007-04-23 00:05 | 女同士入れ替わり