白雪姫「女同士入れ替わりと、女同士の憑依が好きです。


by irekawari
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唯川恵 『今夜は心だけ抱いて』

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「唯川恵(ゆいかわ けい)」先生の小説「今夜は心だけ抱いて」の感想。


母と娘が入れ替わる、女同士入れ替わりがあります。




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入れ替わるのは、47歳の浅生柊子(あそう しゅうこ)と、
柊子の実の娘である、17歳の真丘美羽(まおか みわ)。

女同士入れ替わりの中でも母娘の入れ替わりは特に好きなので、発売前から期待していて、発売日直後ぐらいに本屋で買い、その日の晩のうちに全部読み切ってしまいました。
3~4時間ぐらいで全部読めたと思います。



内容は、すごく良かったです。そして、この本を読んだことで、自分の中における30代~40代ぐらいの中年女性に対する認識がガラリと変わりました。


この本が、他の数多ある入れ替わり作品と決定的に違うのは、「入れ替わるのなら、無条件に若い子のほうが良い」という、入れ替わりを扱った作品ならほぼ常識であることを否定しているところ。
「ただ単に若いだけなら本当に幸せとはいえない。年を取った大人にもいいところはある、幸せを得ることができる」と、この本は言いたいのだと思います。

単純に「若い=良い」ではない、ちょっとシビアな視点になっているのは、やはり作者が女性であることが大きいと思います。
小説にせよ漫画にせよ、入れ替わりを書くのは圧倒的に男が多いと思います。少女漫画で、作者が女性ということがあるぐらいだと思います。
それだけに、「女性視点」から書かれた入れ替わり作品は貴重。


娘と入れ替わって、一気に30歳も若返った柊子。しかし作中、柊子は若くなったからといって、特になにか得をしたようなシーンがありません。入れ替わった柊子が、美羽の身体でセックスしようとするシーンがありますが、結局柊子のほうからセックスを中断する形になっていて、最後までしていません。その後、柊子はもう一度ベッドシーンがありますが、その相手の男に対する餞別みたいな形なので、特に「若くなったからした」というわけではありません。

逆に、母と入れ替わって、一気に30歳も年を取ってしまった美羽。普通に考えれば、かなり不幸です。17歳といえば、青春真っ盛り。身体のほうだって、若さ全開のとき。これから、しようと思えばなんでもできる年代です。それが、急に中年オバサンの身体に。普通なら、イヤなことしか起こらないはずなのですが。
美羽は、自分の父親よりもさらに年上の男と恋に落ち、最終的には両思いになります。身体が入れ替わっているという異常事態の上での両思いですが、作中の彼女ははっきりと「幸せになった」といえます。

「若い子のほうが圧倒的にいい。中年オバサンになった方が完全に不幸」だと思っていた自分にとって、これらの革新的な内容はかなり衝撃的でした。
この本を読んだ後は、「30~40代の中年オバサンもいいなあ」と思えるようになりました。


美羽と柊子は、エレベーターの落下事故で入れ替わります。
一緒に落ちて入れ替わる、という点では階段入れ替わりと似ていますが、「安易にもう1回同じことを実行できない」という点で、「元に戻りにくい」度がアップしています。



62ページから64ページにかけて。
柊子と入れ替わってまだほとんど時間が経っていない時に、美羽が自分の身体=柊子の身体をじっくり観察するシーンがあります。そこの描写が実に丁寧。私もけっこういろいろ入れ替わり作品見てきましたが、47歳の中年オバサンの身体を丹念に描写している作品って、ほとんどなかったと思います。でもこの本では、美羽の心情と共に、柊子の、年をとってやや衰えかけている身体をじっくり、細かく書いてくれていて、ここのシーンを読むだけでも興奮します。実際、ここのシーンは何度も読み直しました。
さらに、作中で「妊娠線」なんて言葉を使ったのはこの本が唯一なのではないでしょうか。私は、この本で初めて「妊娠線」なる言葉を知りました。妊娠線って何?と思った人は、自分で調べてみましょう。思わず「へ~」と言いたくなると思います。


全体的に「めちゃくちゃ良い」内容なのですが、柊子と入れ替わった美羽が、母親の身体をそれほどいやがっている様子がないのが、ちょっと物足りないといえば物足りないです。やっぱり普通、17歳の娘がいきなり47歳になったら、むちゃくちゃ嫌がると思うのですよ。しかも入れ替わる前までは、美羽は実の母である柊子のことを嫌っていました。自分が嫌っていた人の身体になってしまって、しかも年齢もいっきに30も年とってしまったら、泣き叫ぶぐらいで普通だと思うのですよ。
でも実際は美羽は、「いきなり47歳になってイヤだなあ」とは思っているみたいですが、むちゃくちゃ取り乱したりはしません。自分の身体に詰め寄って「私の身体を返してよ!」と叫んだりもしません。そのへんの、他人になってしまったことを嫌がる描写がほとんどないのが、ちょい残念かも。
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by irekawari | 2007-04-20 23:52 | 入れ替わり作品の紹介・レビュー